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シャンパーニュ 温暖化の影響は? 生産者インタビュー①/3

シャンパーニュ 温暖化の影響は? 生産者インタビュー①/3

シャンパーニュ地方は最も高緯度にあるブドウ栽培地域のひとつとして知られています。しかし現在では温暖化の影響で、より高緯度の場所にブドウ畑が出現し世界のワイン地図は変化を続けています。それでもなお最高のスパークリングワインを生み出し続けるシャンパーニュでは今、どのようなことが起こっているのでしょうか。

話し手:ヨハン・ジェンドロン氏
(シャンパーニュ・ボーモン・デ・クレイエール社 輸出マネージャー)
2023/10.27

―このインタビューのテーマは『温暖化』、新しい品種『ヴォルティス』です

どちらも最近のシャンパ―ニュ地方にとってとても大切なトピックですね。まず温暖化の話から始めていきましょう。

まず温暖化についてですが、私は気候変動という言葉を使いたいと思います。なぜなら『温暖化』は気温の上昇だけを想像させてしまうからです。世界中にある多くのブドウ栽培地域には「季節」があります。本物の冬があって、春がきて、夏も秋も本物でした。しかし気候変動とともに変わってきています。真冬に温かい風が吹いたり、夏に冷しい日が来たりすることが起こっています。このような変化を正しく表現するには温暖化ではなく、気候変動という言葉が適していると思うのです。

気候変動の影響によってシャンパーニュでブドウを育てることは昔に比べて“容易”になりました。ヨーロッパ全体で見ても、ベルギーやイングランド、北欧など、これまでブドウ畑が見られなかった国でも栽培が始まっています。

―シャンパーニュ地方への影響

良い影響と悪い影響、生育期間と休眠期間に分けてお話ししようと思います。まず生育期間中に見られる影響には、ブドウがより熟すようになったことが挙げられます。これは良い影響ですね。

過去の収穫時期を見ると一目瞭然です。30~40年前はだいたい10月の終わり2週間が収穫期でした。それが近年は9月の最初の2週間になり、8月末に始めることもあるくらいです。ブドウが熟しやすい気候になったので10月まで待つ必要はないのです。

一方で、悪い影響もあります。生育期中にこれまでのような季節の移ろいがなくなってきたことです。
たとえば今年(2023年)の収穫は、栽培家にとって厳しいものでした。生育が早く始まり、4~5月には果実の成長に必要な気候が整いました。雨はほとんど降らず充分な日照もありました。しかしそこからが問題でした。夏の到来が遅れはじめたのです。7月中旬から8月中旬まで気温が上がらず、雨やにわか雨が降って曇りがちでした。霧がかかり、湿度も高かったです。ブドウにとっては良くない状態です。病気のリスクが高まりますし、とくにカビにとっては格好の条件です。7月中旬から8月中旬にかけてこれほど冷涼になることは今までありませんでした。

気候変動の悪い影響は「季節」そのものが変わってきていることです。過去には普通であったような条件が整わなくなっています。日本ではどうですか?ヨーロッパで起こっていることと共通することがあるのではないでしょうか。

―収穫の不確実性が高まっている

それでも私たちは、適応していかなければなりません。

気候条件や収穫時期、収穫そのものが良いものになるのかどうかの「予測」が年々難しくなっていますので大変なことです。一般的に「天気が良かった」といわれる年は、ワインも良いヴィンテージになるはずだと思うでしょう?しかし残念ながら本当のヴィンテージ評価はブドウを収穫する最後の最後まで分かりません。気候変動が不確実性を高めているからです。

―ブドウにとっての休眠期とは

栽培家と同様に、気候変動によって混乱しているものがあります。それは植物、つまりブドウ自身です。ブドウや植物には一年のライフサイクルがとても大切です。生育期に成長し、より多くの葉を持ち、花を咲かせ、そして実をつける。これが通常のプロセスです。

良い花を咲かせ、良い実をつけるためには、冬の間に充分休んでおく必要があります。秋なると植物は休眠準備のために紅葉し、やがて葉を落とします。葉も房も残りません。そして冬がやってきます。冬の間はずっと寒冷です。凍結期間があるとさらに良く、0度またはマイナスになると植物は休息に入ります。そして、ふたたび春に芽吹きます。植物が「さあ、目を覚ます時だ」と気づくのです。通常は3月頃から始まり、気温は上がって気候が良くなります。

―休眠期に起きている変化

季節が失われつつある今、植物が「勘違い」を起こすようになっていると思います。

秋、ブドウは「もう涼しくなった。10月末だし、そろそろ凍結があるかもしれない」と考えます。凍結が起こると、「休む時かもしれない」と思います。ところが12月に暖かい風が吹くことがあると突然気温が上がります。植物に「目を覚ます時だ」と勘違いさせてしまうのです。そして1・2月に再び凍結が起こります。完全な休眠です。人間でも同じですが、寝ているときに度々起こされると心身ともに非常にストレスがかかります。健康にも影響するのです。

―ブドウの休眠が妨げられると、生育に影響する

冬の休眠サイクルが狂うと樹は完全にリチャージされないのです。それはブドウの開花に影響を与える恐れがあります。実際、充分な実をつけないことが起きています。後の話につながっていくのですが、病気に対する抵抗力が下がっているのを感じます。しっかり休まないと病気にかかりやすくなるのです。 >②に続く

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