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ワインと暮らす

蝶のように飛び立つ一年を。クレオ・ソルの『Butterfly』 とカサ・ベナサル~ワインと音楽~

蝶のように飛び立つ一年を。クレオ・ソルの『Butterfly』 とカサ・ベナサル~ワインと音楽~

音楽とワインの連載コラム。いつか戻る、自由に動き回れる世界への思い。「保ち続けなければならない大切なもの」を教えてくれたワンフレーズを、ワインに合わせて。

(執筆:2022年1月)

2022年の幕が開けた。
今年はどのような一年になるのだろう。
ここ数年は、なかなか思うように動けなかった方も多いのではないだろうか。
2022年は、 “自由に飛び立てる” そんな一年になれば、本当に嬉しい...。
年明けに、そんなことを想いながらふと目にした自宅のストックワイン。
「カサ・ベナサル ゲヴェルツトラミネール/モスカテル」
「ああ。今日はこれを飲もう」

このワインのブドウ品種は、モスカテル60%ゲヴェルツトラミネール40%。華やかな香りと優しい味わいが、年末年始の暴飲暴食で疲れた体にも優しい一本である。
エチケットに描かれた、可愛らしいピンクの蝶が、私の様子を伺っているように見える。... と同時に、私の頭に流れてきたメロディーとリリック。



「Butterfly, lost in the night
Running out of faith but your wings are still bright
Hold on, don't you cave in yet
Your spirit's much strong, don't you forget」

「蝶よ 夜に彷徨い
自信を全て失ったとしても あなたの羽はまだ輝いている
ちょっと待って まだあきらめないで
あなたの心はものすごく強いのよ 忘れないで」



ウェスト・ロンドン生まれのシンガー、クレオ・ソル の『Butterfly』 という曲の一節である。

柔らかく、しかし強い意志を感じる彼女の歌声で歌われるこのフレーズを聴くと、自分の中に眠っている “情熱” のようなものが、目を覚ますのを感じる。



このワインを造る、「パゴ・カサ・グラン」は、スペインのバレンシアに位置し、有機栽培100%のブドウを使用してワイン造りをしているワイナリーだ。
畑はオーナー、カルロス・ラソ・ガルビス氏の祖父の代から、ワイン造りは母親から受け継いだもの。何十年も前から母親がワイン造りを行っていたが、息子カルロスに引き継がれ、地元だけではなく、国内外に広く自分たちのワインを広めようと、2004年にワイナリーが設立された。

一方、クレオ・ソルは、セルビア人とスペイン人の混血である母、ジャマイカ人の父ともミュージシャンで、10代半ばから本格的なボイストレーニングを受けプロシンガーとなり、2010年頃にはUKで一躍有名になった。しかしその後少しの間目立った活動はなく、2020年に『ローズ・イン・ザ・ダーク』というソロ・アルバムをリリースした。
『Butterfly』は、そのアルバムの中の1曲なのだが、2010年代にヒットした彼女のダンスミュージック的な作風とは全く異なり、アコースティックなソウルナンバーとなっている。このアルバム全体が、そのような、R&B、ソウル、ジャズの要素を感じる落ち着いた1枚となっているのだ。
おそらく彼女は活動休止中に、自分が本当に表現したい音楽というものを追求していたのだろう。

カサ・ベナサルを飲みながら、彼女の歌声を聴き、考える。
人には良いときもあり、悪いときもある。それでも自分の信念を持ち続ければ、羽を広げて飛び立てる時がきっと来るのだ。決してあきらめてはいけない。

エチケットに描かれたピンクの蝶は、今年はどれだけの国に飛び立ち、どれだけの人の元へ、喜びを届けるのだろう。
もし皆さんの目の前にも、このピンクの蝶が現れたら、是非手に取ってみてほしい。
“自由に飛び立てる”一年となることを願いながら...。



ペアリング推奨アルバム:Rose in the Dark
ペアリング推奨曲:Butterfly

参考 ele-king『アルバム・レビュー Cleo Sol “Mother”』

ご紹介したワイン・生産者

スペイン
スペイン

Pago Casa Gran

パゴ・カサ・グラン

Pago Casa Gran
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