- ギリシャ ノーザン・グリース
キリ・ヤーニ
Kir-Yianni
伝統とモダンが見事に融合!北ギリシャ、西マケドニア地方で生まれる高貴なブドウ「クシノマヴロ」
目次
- ギリシャを代表するアイコンワイン「キリ・ヤーニ」
- 世界のワイン評論家やマスター・オブ・ワインが大絶賛
- 創設者:ヤーニス・ブタリス氏
- 醸造家:ステリオス・ブタリス氏
- ハロウラ・スピンシロポウォウ氏
- 醸造家:ミハリス・ブタリス氏
- 新旧の融合がうみ出す、ギリシャワイン
- 固有品種「クシノマヴロ」に息を吹き込んだ
- 環境保全型農業を行う北ギリシャの名門
- コミットメント
- 冷涼な銘醸地北ギリシャ地方
- PDOクシノマグロがうまれる銘醸ナウサ
- PDOクシノマグロがうまれるアミンデオン- プロフィロキセラ-
- 雷によって倒された樫の木
- 高貴なブドウ「クシノマヴロ」
- バランスの良い酸味と豊かなアロマの「ロディティス」
- 一度は絶滅に瀕した「マルグシア」
- 冷涼な産地で育つ国際品種「シラー&ソーヴィニヨン・ブラン」
- 年 /
ギリシャを代表するアイコンワイン「キリ・ヤーニ」
世界のTOPソムリエや評論家、マスター・オブ・ワイン達がギリシャ最高峰の造り手として認める「キリ・ヤーニ」。そのルーツは1879年からワイン造りを行ってきた老舗ワイナリー「ブタリ・ワイン」にあります。
「ブタリ・ワイン」は、当時アンフォラを使用しワインが保管されていたギリシャにおいて、最初にガラス製の瓶で瓶詰めを行い、現代ギリシャワインの幕開けともいえる功績を残した名門ワイナリーです。
キリ・ヤーニの創設者であるヤーニス・ブタリス氏はこの「ブタリ・ワイン」を経営するブタリス家の4代目として生まれ、ギリシャの多彩なテロワールに早くから目を向けた先駆者でもありました。ブタリ・ワインでは、ブドウ栽培農家からブドウを購入しワイン造りを行ってきましたが、ヤーニス氏は“テロワールを重視した高品質なワインを造りたい”という確固たるビジョンと熱い情熱を抱き、新たな道に進みます。そして、1997年に北ギリシャ、ナウサの森の中に土地を購入しブドウ畑を一から開墾。地ブドウである固有品種のクシノマヴロや国際品種の試験栽培も行い、その地に最も適したブドウ品種を選びブドウ畑を展開していきました。そして、母体である「ブタリ・ワイン」から独立、今日ではギリシャを代表するブランドまでに成長した「キリ・ヤーニ」を設立しました。
◆高貴な黒ブドウ「クシノマヴロ」とキリ・ヤーニ
ギリシャ随一と言われる高貴な黒ブドウ“クシノマヴロ”。その銘醸地として名高いのが北ギリシャに位置する銘醸地、ナウサ地区とアミンデオン地区です。両地区はヴェルミオン山を挟み隣接し、ヴェルミオン山の南東海抜150-300mの産地がナウサ地区。そして山を挟み南西部の海抜700mの地点にアミンデオン地区が広がります。ナウサ地区のクシノマヴロは濃厚でボリューム感に優れたワインを生み、アミンデオン地区では自根で育つ古木のクシノマヴロから透明感のあるエレガントなスタイルのワインが生み出されています。キリ・ヤーニはこの「クシンマヴロ」を中心に、この地で伝統を守り、且つ革新的なワイン造りを行い高い評価を集めるようになりました。
◆成長を続ける
2000年代に入り、創設者ヤーニス・ブタリス氏の2人の息子(ステリオス氏とミハリス氏)がワイン造りに参画、ワイナリーに新しい風を吹き込みます。そしてよりテロワールを反映した上質なワインを追求すべく専門家と共に、ナウサ地区でのクシノマブロや固有品種、土壌、テロワールと言った新たな分野での研究が始まりました。ナウサ地区では畑を細かく40の区画に分けブドウを栽培。単一区画で育つクシノマヴロからアイコニックなワイン「ディアポロス」を生み出します。またアミンデオン地区では冷涼な気候に合ったアロマティックな国際品種も栽培、ソーヴィニヨンに至ってはギリシャで最初に栽培を始めた蔵でもあり、特別な単一区画から「ドールモ」が造られています。この地区のソーヴィニヨン・ブランはジャンシス・ロビンソンMWも一目置き、世界的にも注目が高まっています。
2人は「良いワインは醸造所でうまれ、卓越したワインは畑で誕生する」というキリ・ヤーニの哲学を基軸とし、伝統を重んじると同時に改革・革新を恐れず新たなプロジェクトクトを推し進めてきました。
また、畑から消費者に至るあらゆる分野での専門知識を深める事で、北ギリシャに点在する素晴らしいテロワールを世に広め、ギリシャワインの国際的認知度を高めることも大きな責務として取り組んでいます。
そして今日、「キリ・ヤーニ」がうみ出す唯一無二の味わいは、ギリシャを代表するアイコンワインとして高く評価されています。
創設者ヤーニス・ブタリス氏と息子のミハリス・ブタリス氏
世界のワイン評論家やマスター・オブ・ワインが大絶賛
ジャンシス・ロビンソン(MW)氏をはじめ、ギリシャ人MWであるKonstantinos Lazarakis氏や、日本在住の日本人としてはただ一人のMWである大橋健一氏をはじめ、多くのMWがその品質を高く認め最も推薦する、ギリシャ最高峰のワイナリーの一つとして知られています。
※マスター・オブ・ワイン(MW)
現在、有資格者は世界で僅か340名程。ロンドンに本部を置く、ワイン業界最高峰の資格制度です。大橋氏は2015年にMWに認定されました。
創設者:ヤーニス・ブタリス氏
◆現代ギリシャワインの父ヤーニス・ブタリス氏
ヤーニス氏は自身のワイナリーだけでなく、ギリシャワイン協会の立ち上げや、研究機関設立に自らの資金を投じ、その多大なる貢献により現代ギリシャワインの父として象的な存在となっています。
また、地元の政治や環境問題にも取り組み、現在ギリシャで2番目の大都市「テッサロニキ市」の市長も勤めています。
◆動物保護 「ヨーロッパ熊の保護」
環境問題の取り組みの一つが、現在ヨーロッパで絶滅の危機に瀕する熊の保護です。日本の月輪熊ほどのサイズの野生熊ですが、ギリシャのアミンデオン、ナウサでの生息数は他のヨーロッパ地域よりも随分多くなり、彼らの活動は野生熊の保護に役立っています。ワインの売り上げによる利益の一部は野生動物保護に還元されています。
醸造家:ステリオス・ブタリス氏
ヤーニス氏の息子で、醸造家でもある長男のステリオス氏。1999年よりキリ・ヤーニの舵を握ります。
学歴:
・ビジネススクールINSEADでMBAを取得
・アメリカのウェズレー大学にて数学の学士を取得
・LSEにて経済学の修士号を取得
アメリカの輸入業者Paternoにて、ブランド・マネージャーとして活躍。中でもブタリ・ブランドの北アメリカでの販売に注力してきました。90年代後半に母国ギリシャへ戻り、母体であるブタリ・グループでビールブランドの立ち上げに関わり、その後キリ・ヤーニの事業を引き継ぎ、弟のミハリスと共にキリ・ヤーニを運営します。
醸造家/CEO
ハロウラ・スピンシロポウォウ氏
2005年よりプロジェクトに参加。
経歴:
・2005年アテネ農業大学校にてPh.D終了
・1995年モンペリエのENSAにて農耕学の修士号を取得
・ギリシャ、テッサロンンギのアリストトル大学にてブドウ栽培学の学位を取得
専門分野はカバークロップやクローンのセレクション、更には仕立て方法(様々な要因といかに関係し、ブドウ樹の幹力にどのような影響を与えているか)等多義に亘ります。また、ギリシャのブドウ樹について多くの書籍・記事を執筆するなど、ギリシャブドウのスペシャリストの一人として知られています。
コンサルタント栽培家
醸造家:ミハリス・ブタリス氏
ヤーニス氏の次男で醸造家のミハリス氏。
学歴:
・ハーバード大学にて心理学の学位を取得
・USデイヴィスにてブドウ栽培学と醸造学で修士号を取得
キリ・ヤーニの新たな挑戦が始まった2002年よりワイナリーの事業に参画。畑の増築や醸造設備の設備拡大に尽力してきました。現在は中国、甘粛省(かんしゅくしょう)天水(ティエンシュイ)で、キリ・ヤーニが手がけるブドウ栽培のプロジェクトにも参加し、活動の拠点を中国にも広げ新プロジェクトの指揮・監督を行っています。
醸造家/代表取締役副社長
新旧の融合がうみ出す、ギリシャワイン
現在、新たな進化を遂げることを目標にブタリス家の5代目を中心に醸造・栽培チームが一丸となり邁進しています。キリ・ヤーニのプリンンシパル、それは「改革が伝統」を築くと言う考えに基づきます。地場伝統品種に目を向け、テロワールの研究を進める事でギリシャ固有品種の可能性を広げる事ができます。更には最新の醸造技術も用いることで、現代のワイン愛好家、消費者に求められる「高い品質のプロフェショナルなワイン」をうみ出すことも大きな目標に掲げ、ワイン造りに取り組んでいます。
例えば、クシノマヴロ。
クシノマヴロは皮が薄いですが一粒の種の割合が多く(3つほど)、酸が高い。この結果ワインのスタイルは「ネッビオーロに似た特徴を持つ品種」として良く例に出されます。トータルフェノール(タンニン量を計測)では、1本のワインあたりネッビオーロが約3g有るのに対して、クシノマヴロも3.8gとどちらもタンニンが強いことがわかります。
ネッビオーロもクシノマヴロも皮が薄い品種ですが共に種の比率が多く、タンニン成分が強い。
この特徴を更に協調させる醸造がとぢらの産地でも伝統的に行われてきました。これは抽出度合(マセレーション)の長さです。伝統的な造りだとマセレーション期間が40日間ほどにもなるそうです。このような醸造由来のタンニンが伝統的なクシノマヴロの特徴にもなっています。
現代ギリシャでは、この伝統的な醸造を土台により洗練されたワインを目指し、2012年『バーガンディ・プロトコール』なる取り組みがギリシャ北部で始まりました。
これは、渋く乾いたタンニンでは無く、ピノ・ノワールのようなソフトで綺麗なワインに仕上げてはどうかという考えから始められたプロジェクトです。
キリ・ヤーニでも、この新しい取り組みが用いられ、ワイン醸造にいかされています。
(一例)
①コールドマセレーション ➠ 20日間ほど低い温度でゆっくりと優しく抽出し、エレガントなタンニンを目指す。
②醗酵温度➠ 最高26度と低い温度で醗酵
新旧の技術の融合は、醸造方法だけでなく栽培する品種にも見られます。
キリ・ヤーニは現在プレミアムラインのワインをクシノマヴロ100%で醸造し、ナウサとPアミンデオン地区からの二つの異なるPDOワインを生み出しています。
また、固有品種100%のワイン以外にも、固有品種 x 固有品種、固有品種 x 国際品種のブレンドを産出し、そのスタイルは白、ロゼ、泡、赤ワインと多種に亘ります。
こうして、固有品種という伝統に現代的なブドウや、醸造技術を用いることで、素朴さとクリーンな要素を合わせ持った上質なワインを造り出しているのです。
チームキリ・ヤーニ
固有品種「クシノマヴロ」に息を吹き込んだ
ギリシャ語で「酸と黒」の意味を持つ、ギリシャ固有の品種「クシノマヴロ」。北ギリシャ原産で世界で最も珍しい“高貴な黒ブドウ品種”の一つとして知られています。北ギリシャは地中海性気候から大陸性気候まで多様な気候帯を持ち、土壌や標高、地形も異なることからミクロクリマが存在します。「キリ・ヤーニ」では多彩なテロワールの中でも特に標高の高い地区を中心に、長年の研究により選び抜かれたクローンやフィロキセラ前の古木を栽培。これらの貴重なブドウ樹は、区画毎に栽培管理がなされ、全て手作業で収穫。更には区画毎に醸造を行います。また、伝統的な固有品種のワインだけでなく、国際品種をブレンドしたものなど、バラエティに富んだワイン造りも「キリ・ヤーニ」の大きな魅力となっており、新旧を融合させたワイン造りによって、多くのワイン愛好家から高い指示を集めています。
環境保全型農業を行う北ギリシャの名門
キリ・ヤーニでは可能な限り農薬を使わない減農薬による自然農法と予防農業の複合農法を取り入れています。畑内に気象観測器を設置することで、水分量や樹勢のモニタリングを行い灌漑や栽培、生態系の維持に活かしています。2019年には敷地内に10エーカーのオリーブとオークの樹を植えることで、ブドウ畑とワイナリー施設全体の二酸化炭素排出量をゼロにすることが出来ました。2020年には持続可能な開発戦略として、新たに37枚のソーラーパネルを設置。エネルギー資源の確保に努めています。この他、乱獲され絶滅の危機に瀕したヨーロッパ熊の保護施設を環境団体と共にワイナリー近くに創設し、現在も売上の一部を運営基金として寄付し続けています。この活動に対して2003年、タイムズ誌がキリ・ヤーニの創設者であり現オーナーの父、ヤニス・ブタリス氏にヨーロピアン・ヒーローを授与しました。
キリ・ヤーニの自社畑
コミットメント
全ての畑の収穫は手作業で個別に行われ、必要に応じて2-3回ブドウの成熟度を見ながら収穫されます。その後ワイナリーへ持ち込まれ、選果台にて2工程の選果が行われます。
収穫、醸造を個別に行うことで、異なるテロワールで育つ個性溢れるテロワールを表現したワインをうみ出すことができます。
ワインの熟成に使用されるオーク材も、その原産地や大きさ、焼き具合などワインに合わせて慎重に厳選され、それぞれの区画の味わいを最大限に引き出す事を可能にしています。そして、最終工程がブレンドです。細心の注意を払い行われるブレンド作業により、異なる畑が持つ特別でユニークなキャラクターを捉えていきます。
キリ・ヤーニのコミットメントは、異なる素材が織り成すバランスを作り上げ、ワインに一貫性を持たせ、更には蔵にとって最も重要な品種である「クシノマヴロ」の美しい熟成を可能にさせることです。
醸造施設-熟成庫
冷涼な銘醸地北ギリシャ地方
北ギリシャ地方の気候は多種多様で、畑の位置や方向によっても異なる特徴を持ち合わせまたワインが生まれます。ナウサやアミンデオンを含むマケドニア地域は山々に囲まれ、気候は冷涼な地中海性気候から冷涼な大陸性気候にまで及び、石灰岩質、砂質、粘土な様々な土壌環境、また畑の肥沃度も多様です。更には畑の立地も平坦な地や丘陵地、或いは川べりや湖の近くなど、多種多様なテロワールの中でブドウが長期にわたり栽培されてきました。中でもアミンデオン地区にはフィロキセラ前、約1世紀以上も古い畑も存在します。これら2地区はクシノマヴロの最高の環境が備わることから、クシノマヴロの銘醸地として注目されクシノマヴロ100%で醸造されるワインはPDOを名乗ることが許されています。
栽培地地図
PDOクシノマグロがうまれる銘醸ナウサ
1968年、ヤーニス・ブタリス氏がナウサにあるヤナコホリ村に50haの区画を購入。1970年代に初めてクシノマヴロの栽培を始めました。彼らの登場は古代から続くナウサのブドウ畑の復興の光となり、テロワールワイン生産の礎となりました。そして後年、近代のギリシャワインに革命をもたらしました。
・気候: クール・メディテレーニアン(冷涼な地中海性気候)でエーゲ海から50kmの距離にあり温暖なエーゲ海の影響も受けるが、ヴェルミオン山の影響で地域は穏やかに冷やされている。また昼・夜の寒暖差が大きいことも特徴。
・土壌: 粘土質(重い粘土質が表土で、その下は石灰岩質土壌)で礫を多く有する。
ナウサは非常に多様な土壌環境を持つことから、現在10の特級地区が選ばれている。
キリ・ヤーニはこの特級地区でブドウを栽培しており、畑を更に細かく40ブロックに分けて管理、区画ごとの醸造を行っている。
・ブドウ樹:第二次大戦後フィロキセラの被害を受け、全て植え替えされ台木を用いて栽培。
・ 平均樹齢: 30年
・ 仕立て方法:ダブルVSP
<ナウサの歴史>
ナウサ地区のワイン造りの歴史は何世紀にも前に遡ります。少なくとも16世紀にはブドウ栽培とワイン造りが行われていたとの記録があります。
トルコの統治下にあった時代から19世紀末、そして20世紀初頭の間にナウサ産ワインは中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、更にはエジプトのアレキサンドリアにまで広がりました。その時代、ブドウはナウサの主要作物で、輸出によってこの地は繁栄を呈しました。主な品種はクシノマヴロで、ゴブレ仕立てで高密度での栽培が行われていました。その後フィロキセラの発生と二度の世界大戦により、ナウサのブドウ畑は大きな損害を被りました。畑が復興されたのは1970年以降になってからのことです。近代になってからナウサのワイン造りにおける変革期は、1971年のVDQS認証です。(ナウサOPAP、現在のナウサPDO) クシノマヴロ100%のワインが認定された2地区のうちの1つです。今日、ナウサは500haのブドウ畑と20ワイナリーがあり、ギリシャで最も重要なワイン産地の一つに数え上げられます。
ナウサの自社畑
PDOクシノマグロがうまれるアミンデオン- プロフィロキセラ-
標高が700mと高く、ギリシャの中で最も寒い産地として知られるアミンデオン。
土壌は痩せた砂が表土となっており、栄養が乏しいことや気候的条件により今日もフィロキセラの被害はありません。結果、この地区には樹齢80年を超える古木がブッシュバインの状態で栽培維持されています。このユニークなテロワールは、ワインにエレガンスを与え、同じクシノマヴロを栽培しても全く異なる個性のワインが生まれます。
<キリ・ヤーニの畑>
アミンデオンにあるキリ・ヤーニの畑とワイナリーはヴェゴリティ湖の畔、カイマッカラン山とヴィッツィ山の麓に位置します。
キリ・ヤーニのワイナリーは当時ブドウ栽培地としてまだ十分に開発されていなかったアミンデオン地区の発展も目指して設立されました。創設者ヤーニス・ブタリス氏の継続的な努力により、後に高品質ワインがうまれる地区として名声を得ることになります。アミンデオンは長い伝統を誇りながらも今日に至るまでブドウ栽培地区としては軽んじられてきましたが、今ではギリシャで最も期待されるワイン産地の一つです。
・気候: クール・コンチネンタル (冷涼な大陸性気候)
もともと、大きな湖があった地区。この湖は現在4つに分かれており、湖に取り囲まれる形で畑が広がっている。本来、非常に寒い気候帯に位置するが、この湖の温熱効果で気温が穏やかに保たれている。
・土壌: 砂質(軽い砂質が表土で、その下は石灰岩質土壌)
栄養が少ない砂質の山岳地ということもあり、フィロキセラの被害が無く、古い畑の樹齢は80年以上。
・ブドウ樹: 台木無しの自根で立つブッシュバイン (灌漑無し)
※新しい畑はダブルVSP(灌漑在り)
クシノマヴロの他、アロマティックな白ブドウ「ロディティス、マラグジア、マルヴァージア、ソーヴィニヨン・ブランなどが栽培されている。
<アミンデオンの歴史>
アミンデオン大地の北西部に広がるブドウ栽培地域は、ギリシャで最も歴史のある産地の一つです。最古の文献には紀元前3世紀に古都ケラで非常に上質なワインが生産されていたと記されています。その後、ワイン造りはオスマントルコ帝国の支配下でも続き、20世紀初頭にはアミンデオン産ワインは高品質ワインとして高く評価され、バルカン諸国や中央ヨーロッパ各国に輸出されました。
しかしフィロキセラの発生と第二次世界大戦の勃発により、ブドウ畑は衰退に追い込まれます。1959年にアミンデオン地区生産者協同組合(Union of Agricultural Cooperatives of Amyndeon)が発足したものの、ワイン産地としては注目を集めることはなく、後にPDOの認定が復興の鍵となりました。
最高級ワインの生産に適したユニークなミクロクリマと土壌のおかげで、今日アミンデオンはギリシャのワイン造りにおいて最も期待される産地の一つに数え上げられます。この地からはPDOの辛口赤ワインとロゼスパークリング、そしてギリシャのPDOとしては唯一スティルのロゼワインを生産しています。
雷によって倒された樫の木
キリ・ヤーニが手掛ける人気の赤ワイン「キティマ・キリ・ヤーニ ヤナコホリ・ヒルズ」が2019年ヴィンテージより名称を『ザ・フォーレン・オーク キティマ キリ・ヤーニ』へ変更しました。
実はこの名称変更の背景には、自然災害がありました。
2019年6月10日、ナウサ、ヤナコホリ・ヒルズにあるキリ・ヤーニ農園は激しい雷雨に見舞われていました。そして1本の樫の木が雷により倒されてしまう被害がありました。
キリ・ヤーニにとって、あまりにも衝撃的で悲しい出来事でした。
1世紀以上もの間、この地で生き抜いたこの木はキリ・ヤーニにとって大変意味があり、オスマン帝国時代に立てられ1980年代に創設者ヤニス・キリヤーニ氏によって改築された白い塔(キリ・ヤーニ タワー)と共にワイナリーのシンボルとして、ロゴにも使用されてきました。
樫の木は既に腐食している部分が多い状態でしたが、蔵のシンボルとして後世にも記憶に残してもらえる方法が無いか、災害の翌日に皆で知恵を出し合い考えました。
そして人々がワインや食事、会話を楽しめる一つのテーブルが生み出されました。
この時、「キティマ キリ・ヤーニ ヤナコホリ・ヒルズ」としてリリースしていたワインの名前もこの木をオマージュし2019年ヴィンテージより、『ザ・フォーレン・オーク キティマ キリ・ヤーニ』に変更することになりました。(意味:キリ・ヤーニ農園の倒れた樫の木)
『キリ・ヤーニ』タワーと倒れた樫の木
高貴なブドウ「クシノマヴロ」
ギリシャ語で「酸と黒」の意味を持つ、ギリシャ固有のブドウ品種「クシノマヴロ」は北ギリシャ生まれの黒ブドウで、世界でも最も珍しい高貴なブドウ品種の一つとされています。(言語:Xinomavro)栽培環境に敏感で、病気にかかり易い点から栽培の難しさはありますが、忘れることのできないような神秘的なワインをうみます。
(特徴)しっかりとしたストラクチャーや複雑なアロマの要素は、イタリアのバローロ地区で有名なネッビオーロ種や、フランスのブルゴーニュ地方で知られるピノ・ノワール種と比較されることが多くありますが、この2品種に負けず劣らずの独自のユニークさを持ち合わせています。
そして、キリ・ヤーニでは、このギリシャ特有の高貴な品種から世界最高水準のワインをうみだすべく、その変化し易い特性を理解するため、研究を続けてきました。
高い酸度(Xnio=酸)、芳醇なフェノール、深さ、濃い色(Mavro=黒)、そして力強いタンニンを持つクシノマブロはバローロ同様、非常に熟成ポテンシャルの高いブドウ品種です。また、独自性とパワーを秘めたその個性は、赤果実やトマト、オリーブのような野菜のアロマも持ち合わせます。
(食とのお勧めマリアージュ)
現在、クシノマヴロからブランド・ノワール、ロゼ、赤ワイン、スパークリングワイン等多彩なスタイルのワインが醸造されています。味わいも甘口からドライなスタイルまでコンセプトに合わせて使い分けられる万能品種です。
現地では上品な肉料理やロースト料理。或いは赤ワインソースで煮込んだ、またはドライフルーツと一緒に料理したラム肉、子牛やジビエ料理ともよく食されています。
熟成が進むとドライフルーツのアロマを持つ素晴らしい複雑味をうみ出し、トッフルやタバコの香りも立ち上がるようになります。熟成されたクシノマヴロには、大地を感じるようなキノコを使用したリゾットやチーズ(イエロー系)が合います。
ロゼにはトマトソースを使ったシーフードやフェタチーズ、ドライトマトをあしらったサラダがとても良い相性を見せます。
やや甘口のスパークリングワインとは、食後のデザートとしてイチゴのタルトがお勧めです。
クシノマヴロ
バランスの良い酸味と豊かなアロマの「ロディティス」
最も古く、かつ最も広く栽培されるギリシャ固有品種の白ブドウ。
ピンク色の果皮をもつロディティスは、完熟果実と高いアルコール、バランスのよい酸味をもつ白ワインをうみ出します。遺伝子の突然変異を起こしやすい品種で、「ロディティス」という品種名そのものには特に意味はく、ギリシャでは様々な名称(クローン名)で呼ばれています。
キリ・ヤーニが使用しているクローン:Roditis Alepou(ロディティス・アレポウ」
「Alepou」は「狐」を意味します。ブドウが成熟した際に果皮が狐の毛のような色に染まることから名づけられたクローン名と言われています。ギリシャのペロポネソス島北部で多く栽培されていて、特に標高が高い地域だと柑橘果実の風味や高い酸、エレガントな要素を備えたブドウが育ちます。
標高が高く収量の低い畑で栽培されたアミンディオン産のロディティスからは、力強いアロマとしっかりした骨格をもつワインがうまれます。アミンデオンの山の中の畑では、痩せた大陸性の気候と痩せた砂質土壌から素晴らしい表現力を備えたロディティスが育ちます。
ロディティス
一度は絶滅に瀕した「マルグシア」
70年代半ばには絶滅に瀕していたマルグシアは、今ではギリシャで最も重要な固有の白ブドウ品種です。
病気にかかりやすいマルグシアは、高度なスキルをもつ生産者が手がけると、その熟成状態によって魅惑的な核果、またはハーブやマスカットのアロマを表します。イキイキとした心地良さと骨格のあるボディ。更には適度なアルコールと複雑味、そしてパワフルな味わいが特徴です。
冷涼な気候と痩せた土壌が広がるアミンデオンは、マルグシアにとって栽培に最適な土地として知られています。
冷涼な産地で育つ国際品種「シラー&ソーヴィニヨン・ブラン」
キリ・ヤーニでは、ブレンドに使われる国際品種も栽培します。これら全てが、冷涼な産地で育つ特徴を有します。
例えば、エステートシリーズの「キティマ・キリ・ヤーニ 白」は、固有品種ロディティス50%を国際品種のソーヴィニヨン50%とブレンドした白ワインです。
両ブドウとも冷涼なアミンデオンで育つのですが、ソーヴィニヨン・ブランの特徴は旧世界の山間部で栽培されるブドウと類似したアロマを持ち、これらがが第一ノーズとして立ち上がってきます。(オーストリアのシュタイヤー・マルクや北イタリアのアルト・アディジェのような、山の麓で山の影響とヴァレー(谷)の影響を受けるような地区のブドウの特徴と良く似ており、このような特徴を持つ、アミンデオン産のソーヴィニヨン・ブランをジャンシス・ロビンソンMWも高い評価をしています。)
また、「キティマ・キリ・ヤーニ 赤」には、ナウサ産の固有品種クシノマブロのブレンドにシラーやメルローが使用されています。
シラーと聞くと暑いオーストラリアをイメージされる事が多いですが、このシラーも所謂今流行の「クールクライメイト(冷涼な気候帯)」で生まれるシラーと特徴が良く似ています。非常に洗練された果実味と繊細なアロマを持ち合わせ、ワインに深みと上質な味わいを生み出させています。
年 /
2015: “非常に良年。殆ど完璧なグレートヴィンテージ” 夏の終わりまでマイルドな気候コンディションと湿度も低く、本ヴィンテージの品質に特別高い期待感が高まる年
2014: “これまで経験した中で最も困難なヴィンテージ” 2014年はキリ・ヤーニ社の実力とブドウ樹の強さを試すヴィンテージとなった。7月22日に、雹嵐がナウサ地区に発生、強い雨が9月初頭に降る
2013: “全ての雲がプラスとなった” 2013の収穫は例年より最も早まった年。早熟のブドウにとっては成熟が難しい年ではあったが、クシノマヴロのような遅熟のブドウにとってはナウサ地区・アミンデオン地区共に最高の結果を生んだ
2012: “良年” 2012は例年より気温が比較的低く始まった(3月以外)。3月は異常なほど暖かくなったが、基準値ほどの降雨量もあった。3月の気温の上昇により、ほとんどの品種の生育サイクルが早くなった。(3月後半より)
2011: “クシノマヴロのクレートヴィンテージ!” 2008-2010までは品質面で平均的なヴィンテージであったが、2011は別格。素晴らしいヴィンテージとなった。
2015: “非常に良年。殆ど完璧なグレートヴィンテージ” 夏の終わりまでマイルドな気候コンディションと湿度も低く、本ヴィンテージの品質に特別高い期待感が高まる年
2014: “これまで経験した中で最も困難なヴィンテージ” 2014年はキリ・ヤーニ社の実力とブドウ樹の強さを試すヴィンテージとなった。7月22日に、雹嵐がナウサ地区に発生、強い雨が9月初頭に降る
2013: “全ての雲がプラスとなった” 2013の収穫は例年より最も早まった年。早熟のブドウにとっては成熟が難しい年ではあったが、クシノマヴロのような遅熟のブドウにとってはナウサ地区・アミンデオン地区共に最高の結果を生んだ
2012: “良年” 2012は例年より気温が比較的低く始まった(3月以外)。3月は異常なほど暖かくなったが、基準値ほどの降雨量もあった。3月の気温の上昇により、ほとんどの品種の生育サイクルが早くなった。(3月後半より)
2011: “クシノマヴロのクレートヴィンテージ!” 2008-2010までは品質面で平均的なヴィンテージであったが、2011は別格。素晴らしいヴィンテージとなった。