サン・ジョヴァンニとは
サン・ジョヴァンニ(San Giovanni)は、イタリア中部・マルケ州のオッフィーダ(Offida)に位置するワイナリーです。
(イタリアをブーツとしたら、ふくらはぎ辺り)
創業は1970年。サン・ジョヴァンニはこの地でも古参のワイナリーのひとつで、設立当初からオーガニック栽培を実践してきました。
現在は約30haの畑をすべてオーガニックで管理しており、地域の環境や気候を活かした自然なブドウ栽培を貫いています。
この地域では、オーガニックがトレンドになる以前から伝統的にオーガニック栽培が主流であり、オッフィーダでは85%以上の生産者がオーガニック農法を実践しています。
その理由は、テロワール(土地)の特性がそもそもオーガニックに適しているためです。
サン・ジョヴァンニは栽培から醸造まで全てのプロセスを自社で管理し、品質を第一に考える造り手。スパークリングワインにおいても、外部委託せず二次醗酵まで自社で行うなど、細部にわたってこだわり抜いた姿勢が際立ちます。
オーガニック栽培に適したテロワール
ワイナリーが位置するオッフィーダ(Offida)は、マルケ州南部に広がる丘陵地帯。
ここはDOCGにも認定される銘醸地であり、晴れた日にはアドリア海を望むことができるほど、海と山に挟まれた理想的なロケーションにあります。
乾燥した気候の中、夏は海風の影響で暑さがやわらぎ、冬は丘への日当たりによって寒さが和らぎます。
特に夏場には昼夜の寒暖差が大きく、1日の中で15〜40℃もの温度差が生じることも。この寒暖差によって、ブドウの美しいアロマがしっかりと保たれます。
土壌はミネラルが豊富な中程度の粘土質で、さらに海の影響も加わることで、ペコリーノやパッセリーナなどの白ブドウはもちろん、赤ワイン用品種のモンテプルチアーノにも、どこかセイボリーな塩味を思わせる風味が感じられる仕上がりになります。
ブドウ栽培へのこだわり
サン・ジョヴァンニでは、全30haの畑でオーガニック栽培を実践しています。
バイオダイバーシティを活かす畑づくり
畑では、畝の間に草を残すことでバイオダイバーシティ(生物多様性)を保ち、自然な環境の中で健全なブドウを育てています。
(草を残したブドウ畑)
もともと生えていた植物に加え、後から植えたものも含め、交互にアブラナ科の植物を5年ごと、小麦・大麦・コーンを2年ごとに手入れを行っています。
白ブドウの畑ではアブラナ科の植物が多く植えられていました。
灌漑は基本的に行っておらず、土中に空気や水が入りやすくなるよう、必要に応じて土壌に切れ目を入れる処置をしています。
必要最小限の処置
病害対策も、EUのオーガニック認証で許可されているもののみに限定。
例えばベト病対策では3kg/haまでの銅が認められていますが、アグロノモ(農業技術者)がこまめに畑をチェックし、必要なときだけ最小限の処置を行います。
品種ごとに異なる畑の向き
約30haの畑では、傾斜や方角に合わせて植える品種を選定しています。
たとえばモンテプルチアーノは日照が豊富な南西向きに、酸を保ちたいペコリーノやパッセリーナなどの白ブドウは、あえて北西向きの斜面に植えられています。
収穫時期も異なり、ペコリーノは8月、モンテプルチアーノは10〜11月に収穫されます。
(南西にはモンテプルチアーノ:樹齢30年)
(北西にはパッセリーナ:樹齢30年)
(北西のペコリーノ:樹齢4年)
厳格なオーガニック認証とリスクへの向き合い方
サン・ジョヴァンニはEUのオーガニック認証に加えて、スイスの非常に厳格な認証制度にも準拠しており、3段階あるバイオダイバーシティレベルの中でも最も高いレベルの認証を取得しています。
もちろん、オーガニック栽培にはリスクも伴います。たとえば2023年は雨が多く、収量が75%も減少してしまいました。
それでも農薬に頼ることなく、自然との共存を選んで栽培を続けています。
自然と共にある畑
畑にはイノシシやウサギなどの野生動物が現れますが、トスカーナほど数は多くないため、特別なネットなどの防除は必要ありません。
醸造について
サン・ジョヴァンニでは、栽培だけでなく醸造のすべての工程を自社で管理しています。
特にスパークリングワインの分野では、地域の多くの生産者がヴェネトの業者に二次醗酵を外注するなか、”すべてのプロセスを⾃分たちで管理すること”を重視しているため、自社で完結させています。
ゆっくりと時間をかけて二次醗酵を行うことで、ものによっては瓶内二次醗酵よりもきめ細かい泡立ちを実現しています。
動物性不使用のヴィーガン認証ワイン
サン・ジョヴァンニは、2014年にヴィーガン認証を取得。清澄には動物性由来のゼラチンなどではなく、ベントナイト(粘土鉱物)を使用しています。
実際は設立当初の1970年から、動物性素材は使用していません。
樽使いと温度管理の工夫
ワインの熟成には、新樽と2〜3年使用したフレンチオークを併用。
使用後の樽は売却するなど、常に状態のよい樽を使い分けています。
樽は主にフランス産ですが、地元マルケの樽生産者からも購入しています。
また、熟成の場となるセラーでは、樽の種類ごとに最適な温度帯で保管しています。
・バリック(小樽)は15〜18℃
・大樽(5,000Lクラス)は18〜20℃
と、細かく管理されています。
おすすめワインとテイスティングレポート
マルタ パッセリーナ ブリュット
シャルマ方式によるスパークリングながら、8ヶ月という長期間の二次醗酵を経て造られた1本。泡は驚くほど繊細で、複雑味があり、プロでも瓶内二次醗酵と間違えることがあるというのも納得の仕上がりです。
前菜からメインまで幅広く合わせられる万能タイプで、エレガントな余韻が長く続きます。
ペアリング:地元名物の「オリーヴの肉詰め(Oliva all’Ascolana)」と共に。これはオッフィーダとアスコリでしか食べられない、本物の味わいです。
マルタ パッセリーナ
2024ヴィンテージからDOCGに昇格。1本の樹からの収量をさらに抑え、より凝縮感あるワインに仕上げられています。
パッセリーナはこの地域を含む13のエリアでしかDOCGを名乗れず、その認定自体が土地の実力を物語っています。
今回は新たに12時間のスキンコンタクトを導入し、色合い、フルーティさ、品種の個性がより明確に。白桃やアプリコット、きれいなミネラル感が印象的です。
ペアリング:アスパラとベーコンを挟んだライスバーガー風の料理と。脂のある料理とも好相性。
※2024VTは未入荷です
キアラ オッフィーダ ペコリーノ
フレッシュでありながら、しっかりとした凝縮感と奥行きがあり、柑橘、蜂蜜、カモミールのアロマが広がります。熟成ポテンシャルも高く、4〜5年ほどでさらに洗練された味わいに。
2024ヴィンテージは2025年5〜6月リリース予定。リリース時期を敢えて遅らせることで、より望ましい状態での提供を目指しています。
ペアリング:ナスとパルミジャーノチーズの「メランザーナ・パルミジャーナ」と。チーズとの組み合わせは特におすすめ。
ザグロス オッフィーダ ペコリーノ
「ペコリーノを1ヶ月遅く収穫してみたら非常に良いワインができた」という偶然から生まれた、希少な限定キュヴェ。好条件の年のみ少量生産され、9月中旬〜後半に収穫したブドウを低温で醗酵、大樽で熟成させます。
瓶熟成を3年以上経ることで、さらなる洗練と深みを帯びていくワインです。蜂蜜やバルサミコを思わせるアロマ、クリーミーな質感、心地よいグリップ感が魅力。
冷たすぎない温度の方が、本来の個性がより伝わります。
レオ・グエルフス ロッソ・ピチェーノ スペリオーレ
最低12ヶ月熟成の規定に対し、18ヶ月の大樽熟成を経た赤ワイン。
ブラックチェリーやカシスのような凝縮した果実味がありながら、フィニッシュには清らかさが残る、ボリュームと上品さのバランスが秀逸な一本です。
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