Craft Sake
酒井酒造株式会社
山口県
錦川の軟水ありきで、伝統×革新で新たな酒にも挑戦する蔵

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- 山口県岩国市中津町1丁目1-31
日本三大名橋「錦帯橋」のごとく心と心の懸け橋となる酒を醸したい
明治4年(1871年)錦川の中州にあたる地で川の伏流軟水が豊かに湧き出る地に蔵を構えられました。蔵の代表銘柄「五橋」は日本三名橋のひとつ、錦川にかかる五連の反り橋「錦帯橋」に由来。この錦帯橋の優美さに因み、「心と心の懸け橋になる酒を」という想いで酒造りをされています。
五橋の名前が全国的に有名となったのは、昭和22年(1947年)。硬水仕込み全盛の時代に五橋の軟水仕込みの柔らかく香り高いしなやかな酒が全国新酒鑑評会第一位獲得となったことからです。以来蔵人たちの研ぎ澄まされた感覚とたゆまぬ努力、技術の研鑽により山口県はもとより全国にファンを増やしてきました。現在は6代目当主の酒井秀希社長のもと総杜氏はじめ多くの蔵人が古き良き技術を踏襲しつつも若手蔵人たちの新たな意見も組み入れたり、真夏でも生酒仕込みができる空調設備、コンピューター制御の醪管理など新技術も導入対応しつつ新たな酒造りに挑んでおられます。
人の五感を大切に
森重杜氏に酒井酒造の酒を醸す上で何が一番大事かとお聞きしたところ、すぐに答えて頂けたのが「五感を大切にすること」でした。コンピューター制御の温度管理設備、温度管理の行き届いた非常にきれいに使われているヤブタなど設備としてもよい酒を醸す要素はいろいろ見受けられる中、杜氏として何よりも大切にしているのは自身でタイミングを計る、そのための五感をしっかり働かせること、とのこと。総杜氏の仲間氏と共に伝統と技術に支えられながらも人間味も重視しされているところがこの蔵のフレキシブルさ、新たなものにも冒険心で挑んでいかれる良い意味での機動力が代表銘柄「五橋」とともに「れもんしとろん」のような新たな酒をも生む極意かもしれません。
錦川のきめ細やかな軟水
錦川は水源を周南市(都濃(つの)郡鹿野(かの)町)にもち、蛇行しながら岩国で宇佐川と合流し、瀬戸内に注ぎ込む山口県一の大河です。花崗岩の山塊をくぐっているためか極めて清澄だと言われます。「超軟水」と言われる特徴のある水が錦川の中州にあたる蔵元所在地周辺ではどこを掘っても湧き出して来るとのこと。酒井酒造敷地内の深さ10m、20m、40mの三本の井戸から湧き出る、きめ細やかな水が酒井酒造の酒質の源流です。
米を知ることが良酒を造る
1996年(平成8年)、昔から米どころとして有名な山口県柳井市伊陸地区での酒米契約栽培に始まり、2017年(平成9年)には農業法人「五橋農纏(のうてん)」を設立されました。同地区で約12ヘクタールほどの田圃で「山田錦」や「美山錦」などの酒米を栽培しています。農作物検査員の資格をもつ社員を置き、米の等級検査も行っておられます。酒蔵が米作りに取り組むことで田圃保全、地域貢献に役立てたいとの想いが出発点です。自然と身についたお米の知識をより良い酒造りに活かすことが出来ています。
文化的背景
酒井酒造の5代目は、ご自身と3代目の残されたコレクション等を集め、陶磁器、書画、篆刻印、書籍などを約500点を所蔵展示されている美術館を創立されました。現在も錦帯橋の近くにあり、館内及び周辺地区では江戸時代の城下町の雰囲気も味わえるとのこと。酒造りのみならず、様々な文化の拠点としての伝統を引き継ぐ老舗蔵だからこそ、お酒の味わいにもどこか穏やかな和が表現されているように感じます。