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世界の造り手から

アンフォラ(素焼きの壺)で醸す格付けマルゴー - シャトー・デュルフォール・ヴィヴァン –

アンフォラ(素焼きの壺)で醸す格付けマルゴー - シャトー・デュルフォール・ヴィヴァン –

かつてシャトー・マルゴーの一部だったシャトー・デュルフォール・ヴィヴァン。ビオディナミ100%に続いて次なる挑戦は、格付けシャトー初となるアンフォラによる醗酵・熟成。良心的な価格でありながら、日本人の好みにあったエレガントなスタイルのシャトーが挑む、新たな展開にますます期待が膨らみます。

マルゴー村のメドック格付け2級ながら良心的な価格

誰もが一度は飲んでみたいと憧れるボルドーワインのひとつ、シャトー・マルゴー。ワインに詳しくない方でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?ボルドー高級ワインの中でも圧倒的な知名度を誇るシャトー・マルゴーが存在するマルゴー村に、ワイン好きならおさえておきたいシャトーがあります。

それがメドック第2級格付けのシャトー・デュルフォール・ヴィヴァン。過去にはシャトー・マルゴーに吸収された時代もあったこのシャトーは、マルゴー2級格付けながら良心的な価格でひそかに人気があります。多くのシャトーは、評価誌で高得点をたたき出すと点数に比例して価格が上がるのが相場ですが、シャトー・デュルフォール・ヴィヴァンは同じ得点のシャトーと比べると比較的リーズナブルに手に入ります。お手頃な価格に加え、正統派マルゴースタイルを尊重したそのエレガントな味わいは、日本人のテイストにも合うもので、近年その評判が高まっています。

ボルドー格付けシャトーはこちら

格付けシャトーでは3番目 - ビオディナミ100%

またボルドーでは珍しくビオディナミ(有機農法のひとつ。制限は有機栽培よりもさらに厳しくなる)を採用しており、これは61ある格付けシャトーの中でも3番目の早さなのだとか。つまり先進的な取り組みをしているシャトーだと言えます。
※左岸の格付けシャトーでは、ポンテ・カネ(ポイヤック)、クリマン(ソーテルヌ)に次いで3番目

人工的に添加するものを出来るだけ減らしたいという想いでビオディナミを導入、2016年にその認証を取得したシャトー・デュルフォール・ヴィヴァンでは、栽培をビオディナミに変えたことで醸造の方にもさらなる変化が必要となりました。

格付けシャトー初!? アンフォラ(素焼きの壺)で醗酵・熟成

ブドウの果実と種子の成熟スピードを比べると、「果実の方が先に成熟」するのが従来の農法。しかしながらこの場合、後から追いかけてくる種子の成熟を待っていると果実が過熟してしまうため、種子の成熟を待たずしてブドウを収穫しなければなりませんでした。そこでかねてより、成熟していない種子のかたいタンニンを樽熟成(酸化的な熟成)する方法で和らげることで美味しいワインを造っていたのです。

ビオディナミ農法のおかげで、果実がよい成熟を迎えた頃に種子の方も、タンニンがやわらかい状態で収穫できるようになりました。つまり「果実と種子の成熟スピードが均一化」されたのです。その結果、執拗な樽熟成をする必要がなくなりました。樽による酸化的な熟成をさせずともよくなったことが契機となって、シャトーは“還元的にワインを造るスタイル”に転向することに。

畑では一切農薬を使用しておらず、ワインの醸造においても出来る限り添加物を減らしたいとシャトーでは考えていました。自然酵母を使用するほか、醸造と熟成において唯一の添加物であるSO2(酸化防止剤)も減らしたいと考え、熟成に最低限必要な分を除いては一切の添加をやめました。次はそのSO2さえも減らして、酸化を防ぎながら(還元的に)ワインを造ることができないかと醸造チームが話していくうえで登場したのが、「特別仕様のアンフォラ」だったのです。

デュルフォール・ヴィヴァンが使っている特別なアンフォラとは?

アンフォラというと、通常は“酸化的な醸造”に用いるイメージがあります。
では、“還元的にワインを造る”ために採用した「特別仕様のアンフォラ」とはどういったものなのでしょうか?

デュルフォール・ヴィヴァンで使用するのはイタリアのTAVA社が手がける特注のアンフォラ。世界では900度ほどで焼かれたアンフォラを使用することが多い中、このアンフォラは1200~1260度という非常に高温で焼かれています。高温で焼くことでアンフォラの表面は非常にきめ細かく、なめらかで組織がしっかりと詰まったものになる一方、割れやすくなるため、完璧に焼き上げるにはかなり高度な技術を要します。この練達した技術をもつのが世界でも唯一のTAVA社。このTAVA社のアンフォラはすべて手作りにこだわった「ハンドメイド・アンフォラ」で、他社のものと差別化できるようそのデザイン(形)に対して特許を取得しています。

ステンレスタンクだと還元しすぎてしまうところ、TAVA社のそれは焼き方によって空気の浸透性をコントロールし、“樽よりも酸化が起こらず、ステンレスタンクのように還元しない” 絶妙な熟成を可能にするもの。その特別なアンフォラを所有しているのがシャトー・デュルフォール・ヴィヴァンというわけなのです。

高温で焼かれたアンフォラは断熱性がとても高く、コンクリートタンクを上回るレベルでワインを定温で保つことができるほか、多孔性をコントロールできることで洗浄もシンプル、衛生的。まさに良いこと尽くめのアンフォラなのです。

はたして、その味わいは?

特別なアンフォラの登場で得られた理想的な還元具合により、SO2の使用は最低限に抑えられるようになったものの、気になるのはそのワインの味わい。その満足度は非常に高いと話すのは、オーナー兼醸造家のゴンザック・リュルトン氏。若くからタンニンはなめらかでクリーミー、ブドウそのものの味が強く、まるで熟成による疲れを感じないような非常にピュアな果実味。

彼は次のように語っています。アンフォラを使い始めてからさらにタンニンの質がよくなり、非常になめらかで綺麗な果実の凝縮感が得られたうえに酸も美しく、ワインのレベルが上がりました。今ではセラーにたくさんのアンフォラが並んでおり、デュルフォール・ヴィヴァンが目指しているスタイルである「質の良いタンニン」と「美しい果実味」の両方を得ることが出来ているため、まさにデュルフォール・ヴィヴァンらしさを表現できていると感じています。この先も更にそのスタイルを変化させ、品質を上げることができると考えています。

アンフォラの使用は、運命だった!?

ビオディナミ認証を取得して以降、さらにSO2の添加量を減らそうとアンフォラでのワイン造りの実験を行った結果、酸化がほとんど起こっていない高品質なワインができました。その当時の実験ではカベルネ・ソーヴィニヨン100%で熟成したにも関わらず、信じられないほどタンニンがなめらかでクリーミーなテクスチャーだったといいます。

またアンフォラは地球の自然物(粘土)から出来ているという点が、自然を尊重するビオディナミ農法のベクトルと重なってアンフォラの導入につながったともいえます。

そしてビオディナミとは関係なく、デュルフォール・ヴィヴァンのシャトーの建物自体に陶器でできたレンガをたくさん使っていることから、シャトーの伝統とアンフォラの使用に運命を感じたという別の理由も実は存在していました。

この特殊な技術を、セカンドワインでも実施している!?

これほどまでに手間も費用もかかる技術なら、どうせ使っているのは高価なファーストラベルだけなんでしょ、と考えるのが一般的ですが、実はセカンドワインでも実施しています。ファーストラベルよりもかなり手頃な価格ですので、ぜひ一度手にとってみてください。なめらかで上品な質感は、偉大なマルゴーのテロワールを表現しています。このセカンドワイン、「ル・ルレ・ド・デュルフォール・ヴィヴァン」はモトックス独占輸入です。

ボルドーワイン界に広がるアンフォラ仕立てのワイン造り

ボルドーの格付けワイナリーでアンフォラを使用したのはおそらくシャトー・デュルフォール・ヴィヴァンが初めてではないかと言われていますが、その後、噂を聞いた他のシャトーも見学に訪れるなど、アンフォラを使用するワイナリーも出てきており、TAVA社のアンフォラは現在シャトー・ラリヴェ・オー・ブリオンなども使用しています。そういった自社の秘訣を隠すことなく、惜しみなく見せてしまうゴンザック・リュルトン氏。自分がよいと思ったものを他の人に伝えることでボルドーワインの品質が上がれば、それは嬉しいことなのだと彼は言います。

今後のデュルフォール・ヴィヴァンの更なる飛躍が楽しみですね。

ワイナリー紹介 シャトー・デュルフォール・ヴィヴァン


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Chateau Durfort-Vivens

シャトー・デュルフォール・ヴィヴァン

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