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ドイツワインの特徴とは。『甘口』だけでなくなった理由

ドイツワインの特徴とは。『甘口』だけでなくなった理由

一般的にドイツワインは「甘い」と考えられる時期がありましたが、現在は辛口が多く産出される生産国です。加えて赤ワインも多く造られるようになっており、目が離せないドイツワインを背景を踏まえながら解説します。

気候に特徴があるドイツワイン

ドイツは、古くからワインが生産されてきたヨーロッパのワイン産地の一つです。ヨーロッパの北部に位置しており、地球温暖化により以前ほどではなくなったものの、ブドウ栽培が行われる地域としては最も寒冷な気候帯に属しています。半面、夏は暑い典型的な大陸性気候。この気候のため、ドイツワインの収穫時期は比較的遅く、ヨーロッパの他の国々に比べて収穫期間は短めです。寒さに強いブドウを選んだり、できるだけ日当たりのよいところにブドウを植えたり、ドイツにおけるブドウ栽培の歴史は、自然と共生しようとする人々の努力そのものでもあります。

ドイツのブドウ畑

川沿いの急斜面がブドウの育成に適していたため、伝統的な銘醸畑の多くは川沿いに存在しています。斜面は日当たりがよく、川の反射光もブドウの成熟を助けてくれます。また、川沿いに鉄道が整備されたことでワインの運搬にもメリットがありました。その反面、斜面でのブドウ栽培には人の労力が伴います。ドイツワインに愛好家が惹きつけられるのは、味わいだけではなく、そのような背景も理由のひとつです。

ドイツワインの味わい

ドイツの白ワインには辛口と甘口、その中間のものがありますが、どちらにしても爽やかな酸味と芳醇な香りが特徴で、世界的に高い評価を受けています。涼しい気候、地理とワイン造りの伝統が融合して生まれます。熟成が進むことでより複雑でバランスのとれた味わいを持つことが多いです。

もうひとつの特徴はミネラル感です。地中に多くの鉱物質を含む土壌が広がっており、それがワインに表れます。ブドウが各産地の土壌の特徴を表現してくれるのです。

ドイツでは赤ワインの需要の高まりを受けて、古くにフランスのブルゴーニュ地方から伝わったピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)種を使った高品質な赤ワインが造られるようになりました。繊細なタンニンと酸味のきいたエレガントさがあるワインで、愛好家がピノ・ノワールに求める要素をきちんと持ち合わせていることが特徴です。そのため世界のピノ・ノワール好きがドイツの赤ワインに注目するようになりました。

白ワインと赤ワイン

ドイツは白ワインの産地として知られていますが、1990年代半ばに起こった世界的な赤ワインブームによって黒ブドウの比率が急上昇しています。2005年をピークにやや減少傾向ですが、黒ブドウの栽培面積は総面積の1/3を占めるようになっています(32.2% 2021年データ)。

押さえておくべきドイツワイン用語①

日本に輸入されている多くのワインは、ドイツ国内で原産地呼称に認定された高品質なワインです。これらには収穫時の糖度や方法によって以下のような等級表記が付くことが多いです。

カビネット(Kabinett)

収穫時の果汁糖度が70~85エクスレ(※)以上。基準は地域とブドウ品種により変わるため幅があります。繊細で軽いスタイルのワインで甘口から辛口の銘柄まであります。もともとはこのワインが大切にカビネット(=部屋)に納められたことから、1712年にエーバーバッハ修道院が使い始めたとされる用語です。

詳しくは、後述の『ドイツの白ワインはなぜ甘い』内の『寒さの影響』でお伝えします。

(※)エクスレはドイツの果汁糖度を測る単位。

シュペートレーゼ(Spatlese)

収穫時の果汁糖度が80~95エクスレ以上(地域とブドウ品種により変化)。香り高く味わいに深みがあり、甘口から辛口の銘柄まであります。収穫を遅らせて完熟したブドウを収穫する必要があります。

シュペートレーゼ(遅摘み法)は、1775年にシュロス・ヨハニスブルグで偶然発見された方法です。

詳しくは、後述の『ドイツの白ワインはなぜ甘い』内の『遅摘み法(シュペートレーゼ)の発見』でお伝えします。

アウスレーゼ(Auslese)

収穫時の果汁糖度は88~105エクスレ以上(地域とブドウ品種により変化)。完熟または貴腐の状態で収穫する必要があります。貴腐独特の香りが混じった味わいになり、主に甘口ですが辛口も見られます。1971年以前のアウスレーゼにはファイン、ファイナー、ファイネストの3等級があり、ファイネストが最も優れていました。3等級が認められなくなった際に生産者が独自に(*,**,***)を付けたり金色のカプセルを使って差別化したりしていました。現在でもこれらのような表記をを見つけることがあったら、その名残です。

ベーレンアウスレーゼ(Beerrenauslese)

収穫時の果汁糖度は110~128エクスレ以上(地域とブドウ品種により変化)。貴腐または過熟した状態で収穫する必要があり、手間のかかる選果が欠かせません。香り高く濃厚で複雑な高貴なワインになります。ベーレンアウスレーゼは甘口で、辛口を造る場合もありますがアウスレーゼなどに格下げして販売されています。

アイスワイン(Eiswein)

収穫時の果汁糖度は110~128エクスレ以上(地域とブドウ品種により変化)。樹に果実がついたままの状態で冬を迎え、氷点下7℃以下の寒気で凍結したブドウを収穫して造る甘口ワインです。もともと生産量が少なく希少でしたが、温暖化の影響でその価値はより高くなっています。ブドウの育成年がワインのヴィンテージになり、1月以降に収穫した場合は前年の年号がつきます。

トロッケンベーレンアウスレーゼ(Trockenbeerrenauslese)

貴腐菌の影響でしなびた状態のブドウを手作業で収穫、選別して造られる高貴な甘口ワインです。収穫時の果汁糖度は150~154エクスレ以上(地域とブドウ品種により変化)。2003、2011年には300エクスレを超える驚異的なワインが生産されたこともあります。

トロッケン(Trocken)は、「辛口」の意味でも使われますが、「乾燥した」という意味の言葉です。貴腐ブドウは文字通り干しブドウのようになった状態になります。

押さえておくべきドイツワイン用語②

原産地呼称による等級とは別に、よく見られるドイツワイン用語を解説していきます。

トロッケン(trocken)

『辛口』の意味です。1990年以降に辛口ワインの需要が増え、多くの生産者が辛口・やや辛口のスタイルで造られるようになりました。酵母によって醗酵されなかったブドウの糖分(=残糖)が、4g/L以下(もしくは9g/Lかつ総酸度が残糖値を2g/L以上下回らない)の少ないワインを造ることで辛口表記が可能です。

ゼクト(Sekt)

ドイツのスパークリングワインを意味する言葉として知られています。3.5気圧(20℃)以上のガスを含んでおり、炭酸はアルコール醗酵(一次醗酵)または二次醗酵で付与されます。ゼクトはベースワインに輸入ワインを使用できます。ドイッチャーゼクト(Deaustcher Sekt)はドイツ国内産のベースワイン、ゼクトb.A.は特定生産地域のベースワイン(=クヴァリテーツワイン 「地理的表示のあるワイン②」参照)を使用しています。

最も高品質なスパークリングはゼクトb.A.で、ヴィンツァーゼクト(Winzersekt:瓶内二次醗酵方式)とクレマン(Cremant:瓶内二次醗酵、手収穫、除梗不可で150kgのブドウから100L以下の搾汁、製造期間9か月以上)の2種類があります。

グリューワイン

『ホットワイン』は、ドイツやオーストリアでは 『グリューワイン』(グリュー:燃える・熱を帯びる)と呼ばれます。クリスマスマーケットやスキー場では寒空の下、ハムを挟んだ分厚いサンドウィッチやソーセージを片手にホットワインが楽しまれています。

リープフラウミルヒ

世界的に有名な甘口の銘柄です。もともとヴォルムスの聖母教会の周辺にあった畑からできたワインで、18世紀半ばから有名になりました。20世紀初頭には世界的な銘酒として高値で取引されていましたが模造品の登場により価値が低下。現在では他地域でも生産できる「特定の個性をもつ甘口白ワイン」となり、一定の基準を満たせば名乗れる銘柄となっています。

ツェラー・シュヴァルツェ・カッツ

モーゼル地方で生産される白ワインの銘柄です。「ツェル村の黒猫」という意味。昔、ツェル村を訪れた商人が黒猫の乗った樽を選んだところ、どの樽のワインよりも美味しかったという逸話からこの名が付きました。​

ドイツの白ワインはなぜ甘いのか

ドイツの白ワインは甘い、とお考えでしょうか?それは正解であると同時に、少しの誤解を含んでいるかもしれません。なぜなら現在ドイツでは辛口の方が多いからです。2016年のデータでは67.5%、実に2/3以上が辛口になっています。1985年に起きた甘口ワインのスキャンダル(ジエチレングリコール混入事件・オーストリア)や1990年代の半ば頃からのライフスタイルの変化が影響して、それまで甘口が多く造られていたドイツは様変わりしました。一方で世界のワインファンを虜にする、あの素晴らしい甘口ワインも造り続けられています。ドイツで甘口を取り巻いてきた背景をみていきましょう。

寒さの影響

ドイツワインは1980年代半ば頃まで甘口ワインの代名詞でした。国内外で甘口ワインの人気は高く、1960~70年代にはピークを迎えます。その需要に応えることのできるワイン産地だったのです。

ドイツのワインが甘口になった要因のひとつにその「寒さ」が挙げられます。ドイツで最も栽培されている「リースリング」は、耐寒性が高く寒いドイツでも生育が可能な品種です。しかし一方で晩熟な品種でもあり、温暖化以前の寒い時代には10月頃に熟していました。冷涼で湿気の多い醸造所内の条件が重なると、醗酵によって果汁の糖分が完全にアルコールに置き換わるとは限らず、ワインに自然と糖分が残ったということが起こりました。甘味が貴重だった時代、甘口ワインは大切にカビネット(=部屋)に納められるようになりました。カビネットという言葉は1712年にエーバーバッハ修道院が用いたと言われています。

遅摘み法(シュペートレーゼ)の発見

糖度の高いブドウを造る方法が発見されたことは、ドイツの甘口ワインを発展させた重要な一因です。1775年にシュロス・ヨハニスブルグで偶然発見された『遅摘み法』は、完熟した果実を樹につけたまま収穫せずに過熟させる方法です。実から水分が抜けて糖分が凝縮することから、甘美な甘口のワインを造ることができました。

当時のシュロス・ヨハニスブルグは収穫を始めるために領主のフルダ大修道院長に承認を得る必要がありました。例年、山の向こうまで伝令を走らせることになっていたのですが、この年は伝令が戻ってこず、収穫時期を過ぎても畑に手が入りませんでした。ようやく収穫命令が届いたとき、ブドウは過熟したり腐ったりして畑に残されたままでした。当時の人々にとってワインは酒である以上に重要な水分の供給源でした。ましてや権力者から預かっている畑で、今年はできませんでしたで済む話ではありません。仕方なくカビだらけのブドウでワインを醸したところ比類なく芳しい美酒ができた、ということです。問題の伝令はその功績(?)を称えられ、シュロス・ヨハニスブルグの中庭で騎馬像になって立っています。

アイスワインの誕生

アイスワインもまた、ドイツの甘口ワインを有名にしました。アイスワイン発祥の地は、ライン川のほとりの街「ビンゲン」に近いドロマースハイム。ここがドイツ初のアイスワインであろうといわれています。収穫は1830年2月11日。ヴィンテージは1829年産でした。畑のブドウが高品質でなかったために造り手が放置し、冬になってから家畜の餌にしようと収穫したブドウが凍結しており、試しに圧搾したところ、非常に糖度の高い凝縮した果汁が得られ、アイスワインの誕生につながりました。その後アイスワインは1858年に新しいカテゴリーとして認められるようになりました。

リープフラウミルヒの輸出

1980年代にドイツから輸出されるワインの約60%を『リープフラウミルヒ(聖母の乳の意)』が占めました。ラインヘッセンで生まれたこの銘柄によって、国際的なドイツワインのイメージが「安くて甘い白」という見方になったことが一因に挙げられます。

ドイツは現在辛口の方が多いですが、気候・醸造方法・嗜好などによって甘口が多くなっていたと考えられます。

辛口の方が多くなった理由

ライフスタイルの影響

1980年代半ばまで甘口白ワインの需要が高かったことの背景に、その楽しまれ方があります。ドイツでは家族や友人が集まった際の会話の合間にワインが単独で楽しまれていました。ワインだけを飲むため、甘口が重宝されたということです。また、パンとチーズなどで夕食を軽く済ませることが多かったため、一般的に食事とともに楽しむ辛口のワインよりも甘口のほうがライフスタイルと合っていたようです。近年は調理した温かいものを食べることが増えたため、辛口の需要が高まりました。

ドイツワインの主なブドウ品種

ドイツでは約35の白ブドウ品種、100品種の黒ブドウ品種が栽培されています。そのうち重要な品種は20ほど。最も代表的なブドウ品種は、白ブドウの『リースリング』です。ドイツのほとんどのワイン産地で栽培され、高品質なワインの生産に欠かせない品種です。味わいは、甘味、酸味、フルーティさがバランスよく調和しており、フレッシュな果実味と芳醇な香りが特徴的です。

その他の代表的な品種としては、リースリングと交配で造られたミュラー・トゥルガウやピノ・ブラン、シルヴァーナーなどが挙げられます。

ミュラー・トゥルガウはリースリングを完熟しやすく改良された品種ですが、ワインの品質的にはリースリングに及ばないことから徐々に栽培面積を減らしています。

シルヴァーナーは、比較的温暖な地域で栽培され、柑橘類のようなフレッシュな香りと味わいを持っています。フランケン地方ではリースリングよりも重要な位置づけで高品質なワインができます。

ピノ・ブランはフランス原産の品種であり、温暖な地域で栽培されることが多く、ミネラル感が強く、リンゴや柑橘類の香りが特徴的です。

黒ブドウでは

ピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)で、ラインガウのエーバーバッハの修道が本拠地のブルゴーニュから持ち込んだ(諸説あります)とされています。軽めの味わいで、複雑味がありイチゴやチェリーのフルーティな香りが特徴的です。

ブドウ品種別の栽培面積

『リースリング』と『ミュラー・トゥルガウ』に、黒ブドウの『ピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)』を加えた3品種でドイツのブドウ畑のおよそ半分が占められています。

白ブドウの生産面積

品種面積(ha)1995-2021(ha)
リースリング
24,318
+1,179
★ミュラー・トゥルガウ
11,230
-12,259
ピノ・グリ
7,698
+5,163
ピノ・ブラン
6,062
+4,240
シルヴァーナー
4,503
-3,041
シャルドネ
2,558
+2,287
★ケルナー
2,150
-5,410
ソーヴィニヨン・ブラン
1,803
+1,803

★マークの品種

寒冷なブドウであるドイツでは、伝統品種であるリースリングを他品種と交配させて耐寒で多産な品種が開発されました。1960~70年代に好まれてたくさん植えられましたが、これらの新交配品種のワインは品質面では凡庸なため市場価値を失いつつあります。現在は生産量が減少しており、伝統品種への回帰傾向があります。

黒ブドウの生産面積

品種面積(ha)1995-2021(ha)
ピノ・ノワール
11,602
+4,403
ドルンフェルダー
7,109
+5,226
ポルトギーザー
2,432
-2,008

国内の赤ワインの需要の高まりを受けて高品質なピノ・ノワールが造られるようになりました。世界的にも注目されており、面積を拡大させています。

ドイツワインの産地

ドイツには主要なワイン産地が13か所あります。ライン川、モーゼル川、ネッカー川、アール川、マイン川など、ドイツには多くの川がありこれらの川沿いがワイン栽培に合った環境となっています。それぞれの産地には独自の特色があり、地理的条件や気候によって栽培される品種も異なります。

ラインガウ(Rheingau)

ライン川沿いに位置し温暖な気候と急峻な斜面が特徴です。歴史が古く、ドイツ最古のワイン産地の一つとして知られています。エーバーバッハ城の修道院(『歴史』を参照)はドイツのワインの歴史に多大な影響を与えています。リースリングの栽培が盛んで、芳醇な香りや優れた酸味が特徴です。また、シュペートレーゼやアウスレーゼといった甘口の高級ワインも有名です。1672年にマインツの聖クララ修道院長が、当時ラインガウにあった(主に黒ブドウ)品種をすべて“リッリング(リースリング)”に植え替えるように通達を出したことがきっかけで後にリースリングの代名詞となる時代を迎えました。リースリング78%とピノ・ノワール12%(2016年データ)が栽培されています。

モーゼル(Mosel)

モーゼルもドイツワインの代表的な産地の一つです。モーゼル川の沿岸に位置し、急峻な斜面を利用して栽培されたブドウから生産されるワインは、繊細な味わいが特徴で、世界中で高い評価を受けています。また、モーゼル地方では、リースリングをはじめとした白品種が約9割を占めますが、ピノ・ノワールを使用した赤ワインが生産されています。19世紀後半からはラインガウ、ラインヘッセン、ファルツとのライバル関係で卓越したワインを生み出しています。

ラインヘッセン(Rheinhessen)

ライン川南岸に位置するドイツ最大のワイン産地です。リースリングの他、ピノ・ノワール、シルヴァーナーなどの品種が栽培されています。リースリングについて初めて言及している文章は都市のヴォルムス(1402年)のもので、ラインヘッセンに属していることから歴史の深さを知ることができます。乾燥して暖かく、隔離された産地でリースリング、シルヴァーナーをはじめ約70%の白、赤約30%が栽培されています(2016年データ)。

ラインヘッセンでは世代交代や新規参入が進み、若くて志のある生産者が協力して産地を盛り上げる動きがあります。

ファルツ(Pfalz)

ドイツ南西部のライン川南岸に位置するワイン産地でラインヘッセンの南に地続きで広がっています。生産面積はドイツで2番目の大きさ。リースリングを中心に栽培面積の64.4%が白ブドウ(2016年データ)。果実味が豊かで香り高い味わいが特徴です。ドルンフェルダー、ピノ・ノワールなどの黒ブドウは35.6%です。1979年時点の黒ブドウ比率はたったの9%で、1990年代後半からドイツが赤ワインの比率を高めた傾向が色濃く表れたのがファルツです。

ブドウの育成にとって天国ともいわれ、温暖な気候とライン渓谷の平坦な畑が広がって熟した果実の味わいが豊かなワインができます。さらにファルツは多くのワイン生産者が存在することでも知られており、様々なスタイルのワインが楽しめます。

バーデン(Baden)

「バーデンのワインだけで本が一冊書ける」と言われるほど個性豊かで幅広いワインが造られる産地です。広さはドイツで3番目、ワイン生産量はドイツ全体の約20%を占めています。南北300kmに細長く伸びた、ドイツ南西部に位置する産地で温暖な気候と土地の多様性により、様々な品種のブドウが栽培されています。赤、白ともに高品質なワインが生産されていて、ほぼ全域に植えられているピノ・ノワール(シュペートブルグンダー、生産面積34.5%、2016年データ)の赤ワインが有名です。

フランケン(Franken)

フランケンは辛口ワインの生産に特化しており、白80%にロゼ、赤ワインが20%(おそらく2010年データ)となっています。栽培面積の21%を占めるシルヴァーナーの辛口白ワインがとくに有名です。

『ボックスボイテル』と呼ばれるフランケンの伝統的な形状のボトルに入った、リースリングやシルヴァーナーやミュラー・トゥルガウなどの品種で造られた白ワインが有名です。フランケン地方のワインは、爽やかな酸味とフルーティな香りが特徴で、さまざまな料理との相性が良いとされています。

ナーエ(Nahe)

ナーエがワイン産地として認められたのは1971年。数字だけを見れば新しい産地に見えますが、ブドウ栽培の歴史は2000年以上の伝統があります(産地認定される前はライン産として販売されていました)。一時期は質より量を求めた時代がありましたが、現在では伝統品種への回帰から高品質なワインが造られる産地として知られています。比較的温暖なドイツ南西部に位置し、大部分が山々に囲まれています。東のラインヘッセンに向けて開けた地形であり、穏やかで乾燥した気候になっています。中庸で柔らかな酸味、バランスのとれたフルボディ寄りのまろやかな味わいが特徴です。リースリングが29%に加え、ピノ系の白ブドウなど白品種が75.6%を占めています。

ヴュルテンベルク(Wurttemberg)

ブドウ栽培は8世紀にはじまりました。ネッカー川とその支流の斜面、ボーデン湖付近にブドウ畑が広がっており、気候はかなり温暖。畑の環境はバラエティ豊富で栽培面積はドイツで4番目(2016年データ)と比較的大きな産地です。生産されるワインのほとんどは地元で消費されるため、生産量のわりに存在感が薄いのが特徴です。謙虚で倹約家、といった気質が対外的にこの産地のワインが出ていかない理由のひとつになっているようです。ヴュルテンベルクの人々は年間一人当たり47.5L(2014年データ)のワインを消費します。これは他の地域に比べてかなり多い量です。働き者とされるこの地域の人々は中辛口~甘口を好むとされ、辛口のワインは1/4以下(2010データ)です。

アール(Ahr)

ドイツ西部のワイン産地のなかで最北のエリアに位置しています。特徴的なのは80%(2016年データ)が赤ワインの生産地であることです。最も印象的で最も高価な赤ワインがピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)から造られています。その歴史は9世紀後半にさかのぼり、ラインガウより先にピノ・ノワールが育てられてきました。冷涼な気候であることからフルーティでエレガントな味わいになります。

ミッテルライン(Mittelrhein)

ドイツ中西部に位置し、ライン川沿いに広がっています。3世紀後半頃からの歴史をもつ産地で、アールと並んで西側のブドウ産地のなかでは最も北側に位置します。85.2%(2016年データ)は白ワインで、中でもリースリングが有名です。この地域は気候が寒冷で、急峻な斜面にブドウ畑が広がっています。そのため畑での作業は難しく機械化できないので採算が合わず、栽培面積は1950年から1/3程度に減少しています。観光地として名高いエリアに観光客を目当てにした商業が盛んで、良いワインを見つけるには生産者を選ぶ必要がありますが、金線細工のように繊細なワインが造られます。

ザーレ・ウンストルート(Saale-Unstrut)

北緯51度付にある、ドイツ最北のワイン産地です。エルヴェ川の支流であるザーレ川と、さらにその支流のウンストルート川沿いに広がっており、緯度はロンドンとほぼ同じですが、大陸性の気候に大きく影響を受けているため夏には気候が安定しています。栽培面積の74.6%を占める白は、ほぼ辛口が生産されます。多種多様な品種が作られており、気候や土壌がフランケンに近いことから比較の対象にされることがありますが、フランケンに比べるとソフトで軽やかと言われます。

ザクセン(Sachsen)

ドイツのワイン産地のなかで最も東側に位置する小規模なワイン産地です。大陸性の気候と土壌を擁しており、極寒の冬と春の霜、開花時期の寒さを乗り切れば豊富な日照と温かい昼、涼しい夜の恩恵を受けてブドウが育ちます。この影響で東側の産地は西部に比べて軽めの味わいに仕上がります。白ワインの比率が高めの74.6%で甘口は少量のみ。かつて交配品種が試験栽培された名残で品種は多様です。ザーレ・ウンストルートとおなじく、気候や土壌がフランケンに近いことから比較の対象にされることがあります。フランケンに比べると軽やかでアロマチック。土っぽさが少ないとされています。

ヘッシシェ・ベルクシュトラーセ(Hessische Bergstrasse)

ドイツで最も栽培面積の狭い小規模なワイン産地です。その90%は辛口、またはやや辛口ですが、輸出されることが少ないため目にする機会は多くありません。

ドイツワインの歴史

ブドウ栽培のはじまり~中世

ドイツのブドウ栽培は、紀元前1世紀に古代ローマ人のアルプス越えによって始まりました。ローマ兵士達の喉を潤すワインを確保するため、ブドウ栽培が行われるようになりました。しかし、しばらくするとローマは自国の輸出を保護する目的でアルプス以北の属州でブドウ栽培を拡大することを禁止。ドイツのブドウ栽培が軌道にのりはじめたのは280年にこの勅令が廃止された以降です。今日まで川沿いに残るブドウ畑の風景は、その後のゲルマン民族による襲撃やローマ帝国の滅亡、5世紀の民族大移動期を乗り越えて存続していきました。

中世に入るとヨーロッパのワイン造りは修道士によって発展していきます。ドイツにおいてはシトー派の修道士が自分たちで飲む以上のワインを生産しており、余剰分を販売するなど重要な役割を果たしました。とくに1136年にラインガウに建てられたエーバーバッハ城の修道院は、シトー派の本拠地であるフランスのブルゴーニュ地方からピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)を持ち込む(諸説あり)など、中核的な役割を果たしました。15世紀初頭にはすでにリースリングが理想的な品種だということをつかんでおり、やがてラインガウはリースリングの代名詞となっていきます。

エーバーバッハ城の逸話

エーバーバッハ修道院のワインは品質の高さが有名で、それを支えていたのは優秀な修道士たちだったようです。その情熱は自分たちの造ったワインについて「金属の香り」や「革の匂いがする」と議論をはじめ、尽きないまま朝まで飲み続けたところ1,200リットル入りの大樽が空になったというほど。その樽の底を覗くと革ひものついた鍵が落ちていたということです。

14~18世紀。困難と発見の時代

14~17世紀にかけてはドイツのブドウ畑にとって困難な時代でした。1348年前後のペストと天災はヨーロッパの人口の1/3~2/3を奪いました。また、宗教、社会、経済の大混乱が続きました。1600年頃に栽培面積30万ha以上(現在の3倍相当)となる黄金期を迎えますが、『30年戦争(1618~48)』と『ファルツ継承戦争(1688-97)』はドイツのワイン産業を荒廃させ、バイエルンとドイツ北部、東部、中部ではブドウ畑が姿を消してしまいました。

18世紀にはライン川とその支流にある各地でブドウ栽培の改善が行われるようになりました。ワインはミサやバロック時代の宮廷文化に欠かせないものになっており、一部のお金持ちの飲み物として扱われていました。リースリングの植樹が推奨され、後のドイツワインに大きな影響を与える過熟ブドウ貴腐といった、遅摘みブドウによる高品質なワイン製法が行われるようになったのはこの頃からです。

19世紀~近代

19世紀のドイツワインは各産地間のライバル関係でさらに洗練されていきました。ラインガウ(1867年)、モーゼルのトリアー地区(1868年)とコブレンツ地区(1898年)、ナーエ(1900年)で畑に格付けが行われ、その他の地域にも格付けが広がりました。1920年代が終わる頃まで、ドイツのリースリングは世界的な名声を得て最高級のシャンパーニュやボルドーと同様に高価で取引されました。

第一次世界大戦の敗戦による賠償金支払いや世界恐慌(1929年)、ナチスによる政策によって再び苦難のときを迎えますが、1960~70年代に起きた甘口ワインブームで好景気を取り戻します。オーストラリアに端を発したエチレングリコール事件により甘口ワインへの不信から生産者は辛口ワインへ回帰。1990年代半ばからはじまった世界的な赤ワインブームにより、黒ブドウの栽培比率があがってきました。現在は白ブドウ67%、黒ブドウ33%(2020年データ)となっています。

ドイツワインの等級

(2021年1月27日施行 第10次改正ドイツワイン法)

ドイツのワインには、ワイン法による規定があり品質等級が定められています。現在ドイツで生産されているワインの多くは辛口で、以前の甘口イメージとは反対です。歴史的に甘口が造られてきた時期があるため法律上は甘口に対しての等級に重きが置かれているように見受けられますが、その法体系に変化が見られます。

※第10次改正ドイツワイン法は2025年産までが移行期間。新法に基づくラベル表記に完全に切り替わるのは2026年産からです。

地理的表示のないワイン

EUワイン

加工用に用いられるベースワインです。

ドイツワイン

第9次以前はターフェルワイン(Tafelwein=テーブルワイン:第10次では廃止)とされていたカテゴリーです。ラベルに表示できない事項が数多くあり、地理的な表示や主要ブドウ品種などの表示が禁止されています。一方で白、ロゼ、赤ワインのブレンドなど、ワイン造り方法の自由度が高いカテゴリーです。

正式にはドイッチャー・ヴァイン・オーネ・ヘアクンフツベツァイヒヌング(Deutscher Wein ohne Herkunftsbezeichnung)といいます。

地理的表示のあるワイン①

地理的表示保護ワイン(g.g.A.)

16地域(後述する13の指定生産地域と指定外3地域)で栽培収穫されたブドウを85%以上の使用している場合に『Landwine~』と表示できることになっています。公的審査を受ける必要がないため、亜硫酸無添加で醸造したワインや、オレンジワインなど生産地域の典型性に欠けつみなされがちなワインに適用する場合が多いです。

正式にはヴァイン・ミット・ゲシュッツター・ゲオグラーフィッシャー・アンガーベ(Wein mit geschutzter geographischer Angabe)といいます。略称はg.g.A.です。

地理的表示のあるワイン②

ドイツワインの最も重要なカテゴリーである『原産地呼称保護ワイン』です。

13の特定ワイン産地で造られた、いずれか1つのブドウ100%で造った場合に使用できます。他にも各地で認可されたブドウ品種を使用することなどの基準があり、それらをクリアしていることが条件です。

クヴァリテーツワイン

地理的表示のあるワインには『クヴァリテーツワイン』『プレディカーツワイン』の2種類があります。

ブドウを収穫した生産地域内で醸造すること、使用するブドウは認可された糖度を上回ること公的検査番号をラベルに表示することなどの規定があります。

アルコール濃度を補うためにブドウ果汁に補糖することが許されています。

プレディカーツワイン

クヴァリテーツワインの条件に、補糖禁止が加わったカテゴリーです。

果汁糖度や、収穫方法によりカビネット、シュペートレーゼ、アウスレーゼ、ベーレンアウスウレーゼ、アイスワイン、トロッケンベーレンアウスレーゼの表記がつきます。




参考文献
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第7版』/ガイアブックス/2014年
シュテファン・ラインハルト/『FINEST WINEシリーズ ドイツ』/ガイアブックス/2013年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2022』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2022年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2018』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2018年
ドイツワインスタイル/株式会社ワールドフォトプレス/241号/『特集 神様がくれた白 リースリング』

参考サイト
■『品質等級』『ワインの産地』/Wines of Germany/2023年4月20日閲覧

https://www.winesofgermany.jp/knowledge/quality-standards/quality-categories/

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