ピノ・ノワールとは?
ピノ・ノワールは、フランス・ブルゴーニュ地方を原産とする黒ブドウの品種です。通常は赤ワインですが、ロゼワインや白ワインに使われることもあります。
『ロマネ・コンティ』や『シャンベルタン』といった著名なワインにも用いられることで知られています。
果皮が薄く、色素やタンニンの含有量が少ないため、繊細で上品なワインに仕上がるのが特徴です。

繊細ながらもグラスを飛び出して部屋を漂うほどの華々しいアロマを纏ったり、ボディ豊かで骨格のある偉大なワインにもなるため、ワイン用のブドウ品種のなかでも最も奥深く、多くのファンを惹きつけています。
名前の由来は、房の形が松ぼっくりに似ていることから「ピノ(=松)」、果皮の色を表す「ノワール(=黒)」という説と、ピニョル(Pignols)という地名にちなんだという説があります(詳細は発祥・由来で解説)。
ブルゴーニュ地方以外では、アメリカ、ドイツ、ニュージーランドをはじめ、日本でも栽培が見られます。冷涼な気候の地域を好み、土地の個性が表れやすい品種です。
ピノ・ノワールの特徴
栽培の難しさと気候条件

ピノ・ノワールは比較的早熟な品種で、温暖な気候では過度に成熟しやすく、果粒がしぼんだり果皮が日焼けを起こすことがあります。
一方で、冷涼な土地では成熟がゆっくりと進み、果実に豊かな酸と香りが蓄えられる傾向があります。
ただし、気温が低すぎたり、湿度が高い環境では病害のリスクも高まるため、安定した栽培にはバランスの取れた気候条件が求められます。
収量が多すぎると品質が低下しやすいため、収穫量の管理も重要です。
土壌との相性

ピノ・ノワールは石灰質を含む土壌を特に好みます。
これは、冷涼な気候と石灰質土壌が揃うブルゴーニュ地方で長く栽培が続いてきた理由のひとつ。
土壌の個性がワインの味わいに反映されやすく、同じ地域でも畑ごとの違いが顕著に現れます。
果粒・果皮の特徴

ピノ・ノワールの果粒は小さく、果皮が薄いため、色素やタンニンの含有量は他の黒ブドウに比べて控えめです。
タンニンの含有量は果実の重量の約1.7%程度。他品種(3〜6%)よりも低いことがわかります。
また、アントシアニン(赤系色素)も少ないため、ワインの色調は淡くなりやすく、味わいも柔らかく繊細な印象に仕上がります。
ボトルの形状

ピノ・ノワールを使用したワインには、伝統的に「ブルゴーニュ型ボトル」が使われます。
肩がなだらかな、いわゆる“なで肩”の形状が特徴で、世界中のピノ・ノワールでもこのスタイルが広く採用されています。
ピノ・ノワールの味わい
ピノ・ノワールにはタンニンや色素が少ないためワインの色は薄めの色調で、味わいは繊細です。
相対的に酸味が豊かに感じられ特有の赤果実の風味が楽しめます。
涼しい産地やヴィンテージのワインから感じられるのは、木いちご、チェリー、アセロラ、すもも、こけもも、梅といった風味。
暖かい産地や良く熟したヴィンテージでは、プルーン、ブルーベリーといった風味が感じられます。
グラスの選び方

ピノ・ノワールは、他の品種とブレンドされるよりも、単一品種でワインになることの多いブドウです。
ワインの複雑さを強調させるグラスを選ぶことで、繊細な香りや奥行きのある味わいがより感じやすくなります。
多くのワイングラスメーカーがピノ・ノワール用(ブルゴーニュ用)グラスをラインナップしています。ボール部分が丸く大ぶりで、リム(飲み口)が小さくすぼんだ形のグラスがおすすめです。
ピノ・ノワールの代表的な産地
ピノ・ノワールの発祥国であるフランスをはじめ、もう一つの伝統国ドイツ、イタリア、スイスなどがヨーロッパの産地です。
近年ワインの生産量が増加しているアメリカ合衆国、ニュージーランド、チリ、南アフリカや、高温・多雨で難しい条件をもつ日本でも栽培が行われています。
ピノ・ノワールに合う料理
鶏肉

ブルゴーニュ地方では「鴨のロティ」がピノ・ノワールとよく合わせられる料理のひとつです。
ご家庭で楽しむ場合は、地鶏などを使って、ロゼ色を保つように火入れすると、ワインと最高にマッチします。
豚肉

熟成すると紅茶の風味が感じられるピノ・ノワールに「紅茶豚」や、角煮やトンポーローなど醤油ベースで煮込んだ豚料理が合わせやすいです。
ピノ・ノワールの繊細さに合わせて、厚い肉よりも一口大のサイズにすることがポイント。
豚のしゃぶしゃぶ、冷しゃぶといった薄切りの豚の料理も合います。たれや薬味をきかせるのがおすすめです。
梅

ピノ・ノワールに感じられる梅のような風味に合わせて、料理に梅を使ったソースを取り入れるのもおすすめです。
肉を火入れしたフライパンに梅と酒で味を調えた梅ソースや、刻んだ梅肉と紫蘇をトッピングするのもよいでしょう。
一気にピノ・ノワールに合う料理に変身します。
チーズ

フランスの代表的な白カビチーズ「ブリー」「カマンベール」や、チーズをシュー生地に混ぜて焼いたグジェールは、ピノ・ノワールの風味と非常によくマッチします。
ピノ・ノワールと他の黒ブドウ品種の違い
ワインによく使われる黒ブドウには、ピノ・ノワールのほかにも、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー(シラーズ)などがあります。

ここでは、それぞれの品種とピノ・ノワールの主な違いを比較してみました。
| ピノ・ノワール | カベルネ・ソーヴィニヨン | メルロー | シラー(シラーズ) | |
|---|---|---|---|---|
| 果皮 | 薄い | 厚め | 薄め | 厚い |
| タンニン | 弱め | 強め | 中程度〜やや柔らかめ | 強め |
| 色調 | 淡め | 濃い | 濃いめ | 濃い |
| 香り | 赤系果実、スミレ、 紅茶、梅など |
黒系果実、杉、カシス、 グリーンノート |
プラム、ブラックチェリー、 チョコレート |
黒胡椒、黒果実、 スモーキー、スパイス |
| 味わい | 繊細、酸が主体、余韻は柔らか | 力強い、しっかりした構造、熟成向き | 丸みがあり、やさしい印象 | スパイシーで濃厚、肉料理向き |
| 食事との相性 | 鶏肉、豚肉、 和食にも合わせやすい |
牛肉、グリル、 重めのソース料理 |
煮込み料理、 トマトソース系 |
ラム、スパイシー料理、BBQなど |
カベルネ・ソーヴィニヨンとの違い
カベルネ・ソーヴィニヨンは、力強さと長期熟成に向いた構造をもつ品種です。ピノ・ノワールと比べて重く、しっかりとしたタンニンと深い色合いが特徴です。
メルローとの違い
メルローは、カベルネに比べるとタンニンがやわらかく、果実味も豊かで、より親しみやすい味わいです。ピノ・ノワールほど繊細ではないものの、丸みのあるスタイルが多く、幅広い料理に合わせやすいです。
シラー(シラーズ)との違い
シラー(シラーズ)は、スパイシーでボリュームのある赤ワインになります。黒胡椒やスモーキーな香りが特徴で、ピノ・ノワールとは対照的に、力強い味わいを楽しみたいときに選ばれます。
ピノ・ノワールで作る白ワインとは?
ピノ・ノワールは基本的に赤ワイン用の黒ブドウ品種ですが、白ワインにも使われます。
黒ブドウは、果皮こそ黒色をしていますが果肉と果汁は基本的に「白」です。シャンパンはその代表で、ピノ・ノワールを使った白を簡単に見つけることができるでしょう。
黒ブドウ100%で造られた白ワインを「ブラン・ド・ノワール(Blanc de Noirs)」といいます。
ピノ・ノワールの歴史と起原
発祥・由来
ピノ・ノワールはフランスのブルゴーニュ地方広域を発祥とするブドウ品種です。
『ピノ』の名前は果房の形が「松かさ」に似ていることから「松」を意味するpineに由来するとする説と、ピニョル(Pignols)という地名にちなんだという説があり、どちらも有力です。
地名説の『ピニョル』はオーベルニュ地方にあり、もともと王や地主のブドウ畑に植えられていたピノの穂木をとっていた場所です。
この地でも実際に中世からピノが栽培されていました。
▽ピニョル(Pignols)の場所
起源・歴史
ピノ・ノワールは古い品種の『ピノ』の変異でできました。
そのピノは今のところ起源が不明で、ジュラ地方で栽培が続いている品種「サヴァニャン」と親子関係にあることがわかっています。

間違いないのは、最も古く、最も重要な品種の一つだということです。重要というのは、ピノ・ノワールが最高峰のワインを生むことはもちろんですが、その長い歴史で交配・変異によって様々な重要品種を生んだことも一つの理由です。
例えばシャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、ソーヴィニヨン・ブラン、シュナン・ブランなど、現代のワインに欠かせない多くの品種がピノの交配系譜に入っていて、ピノの子、姉妹、孫、ひ孫などにあたります。

ピノには交配ではなく、変異によって生まれた色違いまたは性格違い(クローン)もあります。
黒色のピノ・ノワールや、さらにその変異であるピノ・グリ(黒と白の中間、灰色)、ピノ・ブラン(完全な白)、早熟なムニエ(ピノ・ムニエ)などが生まれました。ピノ・ノワール自身にも僅かな遺伝子違いのクローンがあります。

このようにピノには変異種が多いことから「変異を起こしやすい性質」と言われることがあります。
しかしこれには科学的証拠がなく、2000年以上にわたる歴史の長さから変異するのに充分な時間があったと考えるのが正しいようです。
ピノ・ノワールのクローン
ブルゴーニュ地方ではピノ・ノワールの質の高いクローンが選抜されたことがあります。

これらのクローンは番号を付与されたのち、世界中の栽培地域に輸出されていきました。現在需要の高いクローンの一例を挙げると、113、114、115、667、777、828 などがあります。
これらは『ディジョン・クローン』と呼ばれ、一般に小さな果粒で、複雑で控えめなワインができます。
その他にもカリフォルニア大学デービス校配布したポマール・クローン(UCS4,5)、スイスで認定されたウィルス・フリーのUCD1、UCD23、ニュージーランドにロマネ・コンティの畑から密輸されたとされるAbelなどがあります。
おすすめのピノ・ノワール ワイン
日常の食事に寄り添う一本から、特別な時間にふさわしい銘柄まで、タイプの異なるおすすめワインを厳選してご紹介します。
ブルゴーニュ地方のピノ・ノワール
1912年から続くドメーヌが造るブルゴーニュ ピノ・ノワール
ブルゴーニュ産のワインで3,000円台はお買い得。手ごろな価格でありながら、綺麗な果実味をお楽しみいただけます。
力強い味わいで人気
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- フランス
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赤
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2021
Domaine Drouhin-Laroze
ドメーヌ・ドルーアン・ラローズ
Gevrey-Chambertin Cuvee X Climas
ジュヴレ・シャンベルタン
750ml, 9,500 yen
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紹介したワインはモトックスのオンラインショップ【UNCORK】でご購入いただけます。
ブルゴーニュ地方・ピノ・ノワールの聖地「コート・ド・ニュイ」のワイン
ジュヴレ・シャンベルタンらしい力強さとフィネスを合わせ持つワイン
つややかで雑味のない澄んだ味わい
ピュアでエレガント、どこまでも続く美しい余韻を持つ、女性的で繊細なワイン
ブルゴーニュ以外のピノ・ノワール
カリフォルニア産ピノ・ノワール
シルキーなタンニンが魅力
ブルーベリー香るニュージーランド産
他にもあります。ブルゴーニュ以外のお手軽ピノ・ノワール。
参考
ジャンシス・ロビンソン、ジュリア・ハーディング、ホセ・ヴィアモーズ/『ワイン用葡萄品種大辞典』/共立出版株式会社/2019年
ビル・ナンソン著・麹谷 宏監修/『ブルゴーニュ』/ガイアブックス/2012年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年
『ワイナート』114号/特集 ピノ・ノワールの新天地 ニュージーランド キアンティ・クラッシコ最新情報/2023年秋
データ参照
キム・アンダーソン/『Which Winegrape Varieties are Grown Where?』/アデレード大学/2020年/2023年7月9日閲覧






