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ワインと暮らす

インヴィンシブル=無敵な2人のコラボ『Love for Sale』を聴きながら想う未来〜ワインと音楽~

インヴィンシブル=無敵な2人のコラボ『Love for Sale』を聴きながら想う未来〜ワインと音楽~

レディー・ガガと、トニー・ベネット。音楽シーンで無敵だった2人のアルバムを聴きながらコラボレーションの良さを改めて考える。ワインと音楽を合わせて楽しむ連載コラム。筆者はジャズシンガーの東海林美乃梨。




『Collaboration』
それは違った畑の人たちが、共に何かひとつのことを成し遂げるということ。
おそらくその時、両者の才能、技術、知識、感性が重なり合い、輝く何かが生まれるのだろう...。
人は1人よりも、誰かと何かを目指すことによって、力を増す生き物だということかもしれない。同じ志のもと、同じ信念のもと、共に何かを。
異なる組織に属する者が共に素晴らしいワインを造り上げる。
ワイン造りにも、そんな話があるのだ...。

「インヴィンシブル=無敵」という意味を持つポルトガルはドウロで生まれたワイナリー。
ポルトガルで喝采を浴びるワイナリー「コンセイト」の女性醸造家であるリタ・マルケス氏と、南アフリカで大人気の「ブーケンハーツクルーフ」の醸造家マーク・ケント氏がタッグを組み2019年に設立された。
2人のスター醸造家のコラボレーションにより新たなワイン造りのプロジェクトがはじまった。
2014年にドウロを旅したマークがコンセイトを訪れた際、リタと意気投合したことから始まったのだという。

私が最初にこの「インヴィンシブル」に出会い、ストーリーを聞いた時に思ったことは、「ワイン造りの世界にもコラボってあるのね!」ということであった。
今やあらゆる業界でみかける「コラボレーション」。
伝統的なことが続いているイメージが強いワイン造りの世界にあることが少し意外に感じた。

それから思い浮かんだのは音楽界の「コラボレーション」。
ジャズヴォーカルの巨匠、トニー・ベネットとポップス界のスターレディー・ガガのジャズアルバムであった。
2011年に出逢ったトニー・ベネットとレディー・ガガは2014年に『Cheek to Cheek』を、そして2021年には『Love for Sale』をリリースしている。
ジャンルも世代も全く異なる2人だが、幼い頃からクラシックピアノを弾き、ジャズを歌っていたというガガと、伝説的なヴォーカリスト、トニーは10年来の友人だったのだ。
2枚目のアルバム『Love for Sale』では、数々の名曲を生み出した作曲家「コール・ポーター」のポピュラーなナンバーを収録している。
もちろんこのコラボレーションは話題を呼び、ジャズをあまり聞かない若い世代にも名曲の数々を広めることとなったのだ。
アメリカのショービジネスに大きな影響を与えてきたこの2人は、まさに「インヴィンシブル=無敵」である。

ポルトガルのドウロで造られる「インヴィンシブル」は、畑はいずれもドウロの伝統的な混植(=同じ畑の中に多種類のブドウを植え、分けずに一緒に収穫し、一緒に醸造)という形をとっている。そんな伝統的な手法をとりつつ、「自分たちの畑を、自分たちが見つけたときよりも良い状態で残すこと」を信条に、サステナブルな農業にも取り組んでいるという。伝統を守りつつ、現代、未来へ残るものを引き継いでいくという志は、トニーとガガのコラボレーションアルバムに通づるものを感じる。古き良きジャズの名曲を、より親しみやすい形で未来へ継承していくという...。

「インヴィンシブル」のワインには、ナンバー1とナンバー2がある。ナンバー1は、リタが先導し造られたワインだそうで、明るくフレッシュ、かつエネルギッシュな味わいである。ナンバー2は、南アフリカで20年以上の経験を誇る醸造家マークが、凝縮感溢れる彼らしいスタイルに旧世界のエレガンスを取り入れた複雑な味わいとなっている。
その味わいを楽しみながら、トニーとガガの2枚目のアルバム『Love for Sale』を聴く。そこには、ワイン造りへのゆるぎない信念と、音楽へ対する深い愛情が融合した、穏やかで力強い空気が流れ、本当に心地が良い。ワイン造りと音楽の長い歴史と伝統、そして未来への想いが伝わってくるのである。

ところで、ソロで活動をしている私のようなミュージシャンにとっては、ステージは毎回「コラボレーション」である。
自分以外のミュージシャンと、その日のステージが最高のものとなるように、お互いの感性を出し合い高め合い、音楽を生み出す。
その瞬間はとてもエキサイティングなものであり、決して1人では生み出すことのできない特別な音を奏でることとなるのだ。
「コラボレーション」がもたらすインパクトと力の強さは、私も常々感じている。
リタとマークの「インヴィンシブル ナンバー2  レッド」を注いだグラスを傾けながら、2人の今後の発展に期待を寄せ、私は私自身の次なる「コラボレーション」の為に、感性と技術を磨き続けようと、心に決めた。

惜しくも昨年7月に、享年96歳で亡くなったトニー・ベネット。レディー・ガガとの『Love for Sale』は彼の最期の作品となったが、「インヴィンシブル=無敵」の2人の輝きは永遠に続く。

ペアリング推奨アルバム:トニー・ベネット&レディー・ガガ『Love for Sale』(ユニバーサル ミュージック)

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