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日本ワイン好きが解説 『山梨ワイン』の特徴

日本ワイン好きが解説 『山梨ワイン』の特徴

今回日本ワイン好きスタッフが取り上げるのは、日本のワイン造りを古くから支え続けている『山梨県』です。日本ワインの生産量とワイナリー数はともに日本随一を誇り、その数はなんと100場弱。⼀般社団法⼈ ⽇本ワイナリーアワード協議会が全国の優れた⽇本ワインを生みだす造り⼿を年に一回表彰している『日本ワイナリーアワード』の対象ワイナリーが全国に320場ほどであることを考えれば、山梨県のワイナリーの数の多さがわかるのではないでしょうか。

山梨県のワイン造り歴史

日本のワイン造りは山梨県と、隣の長野県を中心に行われてきました。冷涼な気候で少ない降水量に加え、日照時間が長いという特徴があったからです。近年は気候変動の影響によって山梨県に適応するブドウ品種が大分変わってきています。

山梨県のブドウ栽培の歴史は古く、一説には718年(大善寺説)とされています。とはいえこれは生食用のブドウのことで、ワイン造りの歴史はヨーロッパの伝統国ほど長くはありません。明治3年(1870年)に新政府の殖産興業政策に端を発して「ぶどう酒共同醸造所」が設立され、明治10年(1877年)には勝沼町で「大日本山梨葡萄酒会社」(通称:祝村葡萄酒会社、現メルシャンのルーツ)が完成。同年に高野正誠と土屋龍憲が渡仏して、ワイン造りのノウハウを日本にもたらしました。

G.I.とは

国が定めた「産地名」の適切な使用を促進する制度です。「Geographical Indication」の略で地理的表示を意味しています。

お酒にその産地ならではの特性が確立されている場合、産地が申立てを行い国税庁長官の指定を受けることができます。指定された産地名は独占的に名乗れるようになります。酒類のG.I.は国税庁によって先行してはじまり、1994年に「酒類の地理的表示に関する制度」が制定されました。1995年に壱岐、球磨、琉球が初の認定を受けています。その後、農林水産省によって農林水産物などのG.I.制度が開始(2015年)。現在では食品、飲料などもG.I.認定の対象に含まれるようになっています。

G.I.山梨

日本各地で進む『G.I.認定』ですが、ワインとしての第一号は2013年の「G.I.山梨」です。

2017年にはG.I.山梨が見直され、一定の生産基準を満たして官能検査を経なければ「山梨」を名乗ることができなくなりました。その基準は「ぶどう本来の香りや味わいの品種特性があり穏やかな酸味とバランスの良いワイン」です。

山梨県の気候と風土

内陸県である山梨県は東京都の約2倍の総面積を誇ります。山梨県のワイン造り、そしてワインの原料用ブドウの栽培はほとんどが中心部に位置する甲府盆地その周辺に集中しています。盆地の北西部や八ヶ岳山麓に新たなブドウ畑が増加しています。

特筆すべきは日照量ですべての地域で1,200時間を超えます。これは長野県の各地とほぼ同じで日本で最高レベルです。これらの要因が山梨県の高品質なワイン造りに大きなメリットをもたらしています。

ワイン生産量

山梨県産日本ワインの年間生産量は750ml換算で約580万本と日本最大の規模を誇ります。これは実に日本全体の26%前後を占める計算です(2020年データ)。醸造量で最多の品種は前回のコラムでも触れた甲州の約3,200tで、その後にマスカットベーリーA、デラウェア、巨峰、メルローが続きます。
一大ワイン産地の山梨でもブドウの大半は醸造用ではなく、生食用として出荷されています。

山梨県のワイン産地

産地を大きく分けると、甲府盆地の東部西部中央部北西部4つに分けることができます。

甲府盆地東部

甲州市、山梨市、笛吹市を含むエリアです。山梨県のワイン産地というと、まずこのエリアをイメージする場合が多いです。
日本のワイン造り発祥の地で、稼働しているワイナリーの7割以上がこのエリアにあります。大手メーカーもあり、3社がこのエリアにワイナリーを構えています。基本的に傾斜地が多く扇状地が複雑に入り組んでいることから斜面の向きや土壌も多様なのが特徴です。
畑別の特徴を出した銘柄も多く生産されていて、その複雑な地形を活かしたワイン造りが進んでいます。実際に訪れると場所によって風の通り抜け方や涼しさなどの条件が大きく違うことに気づかされます。

東部地区はさらに、

  1. 塩山地区
  2. 勝沼町エリア
  3. 大和地区
  4. 山梨市エリア
  5. 笛吹市エリア

に細分することができます。それぞれのエリアで畑の向きや植わっているブドウ、土壌などが違い、各生産者がそれぞれの特徴を活かしたワイン造りを行なっています。

甲府盆地中央部

4軒のワイナリーがあり、土壌はグライ土という粘土の一種の水分を多く含む土壌です。水はけのいいところを選んでブドウが栽培されています。
生育期間の平均気温は20℃を超えて、勝沼エリアや韮崎エリアに比べると高め。それに伴って収穫時期も早めで、かつては新酒の原料の多くはこのエリアで栽培されていました。

甲府盆地北西部

2000年頃から新しい畑が次々とひらかれていっている注目のエリアです。ワイナリーの数は10軒を超えていいます。
標高の高いエリアにも畑があり、他の地域と比べると気温も降水量も低くて日照量に恵まれるのが特徴。欧・中東系品種の割合が多いエリアでもあります。

甲府盆地西部

広大な扇状地で、主な栽培産地は御勅使川の右岸です。非常に水はけの良い礫を多く含む砂質の土壌なのが特徴。甲州の栽培がメインで、近年ワイナリーが増えています。

その他エリア

現在では甲府盆地南部、富士山周辺のエリアにもブドウの栽培地があります。

以上、主要なワイン産地の山梨編でした。
伝統的なワイン産地でありながらも、どんどんと新しいワイナリーも増え様々な試みも行われている山梨県。
次回は長野の産地について掘り下げていきたいと思います。




参考文献
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年

参考サイト

国税庁/酒類の地理的表示/2023.9.20閲覧
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiriteki.htm

国税庁/酒類の地理的表示一覧/2023.9.20閲覧
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiri/ichiran.htm

農林水産省/地理的表示メールマガジン/2023.9.20閲覧
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/mailmag/index.html
└第2号(平成27年4月30日発行)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/mailmag/pdf/no2.pdf

国税庁/地理的表示「山梨」生産基準/2023.9.20閲覧
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/chiri/170619_besshi01.htm

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