エイジングケアにおすすめのワイン
体が『糖化』する?を、 わかりやすく解説
『抗糖化』の説明をする前に「そもそも糖化ってどんなこと?」を知っていただきたいので簡単に解説します。
『糖化』はタンパク質と糖が結びつく化学反応、すなわちコゲることです。
身近な例では、玉ねぎをフライパンで炒めると次第にきつね色になりますよね?これが糖とタンパク質を加熱することで生じる「糖化」という現象で、発見者のメイラードさんにちなんで「メイラード反応」とも呼ばれます。
糖化はフライパンの上だけの現象ではなく、私たちの体の中でも起こっているんです。
人の体を構成するものの中で、タンパク質は水分に次いで多い成分です。タンパク質は体温の暖かい環境の中で糖と結びつくと、次第に姿を変えていきます。タンパク質と糖が豊富に存在するので、体内では日常的に糖化が起こっています。
糖化は初期段階ならば元に戻る性質があります。ですから糖が過剰な状態が続かなければ大した問題にはなりません。しかし反応が進んでいくうちに次第に後戻りができない性質に変わり、タンパク質は本来の機能を失います(変性)。そして最終的に“コゲ”とも呼ばれる糖化最終生成物(AGEs;advanced glycation end products)になります。
AGEsは糖化の最終段階にできる物質の総称で、数十種類あることが知られています。一般的な特徴は「分解されにくく、体内で徐々に蓄積する」ことで、見た目や体内のエイジングケアにとって大敵であることが分かってきています。
糖化と老化・疾患の関係
『糖化』はタンパク質の変性とAGEsの蓄積ですが、これらは老化を引き起こします。そのメカニズムをみてみましょう。
① タンパク質の間に劣化した「橋」をかける
皮膚や骨、血管などではコラーゲンタンパク質が組織をしなやかに保つ役割を果たしています。そこではスプリングのような「架橋」が規則正しく並んで橋をかけています。ところがAGEsが蓄積するとコラーゲンの間に無秩序な橋をかけてしまうため、組織全体の安定性が崩れて壊れやすい構造になります。
② 細胞表面の鍵穴(受容体)と結合して炎症や酸化ストレスを生む
血管を形作る細胞などの表面には、AGEsと結合するための鍵穴(受容体)があります。AGEsとこの受容体が結合すると、細胞の中で酸化ストレスや炎症物質が作り出され、血管の障害や細胞死を引き起こす原因になります。
酸化と糖化の蜜月関係
これまで老化には酸化ストレスの関わりが大きいとされてきました。しかし近年では酸化の根底には糖化があることや「糖化が酸化ストレスを引き起こし、酸化ストレスが糖化をさらに促進する」という悪循環を生むことも分かっています。糖化によってできたAGEsは酸化を促し活性酸素を作りだします。活性酸素は体にとっては毒にもなり、酸化や炎症を引き起こします。本来であれば体内にはこの活性酸素を取り除く抗酸化酵素がありますが、酵素もタンパク質であることから糖化することでその機能を悪くしてしまうのです。
AGEsは老化を引き起こしますが、これは体内の健康とも無縁ではありません。健康的な生活を送っている人と、不適切な生活習慣や運動不足の人を比べるとAGEsの蓄積量が大きく異なります。実際に加齢に関連する病気と糖化の関係については数多くの研究成果が報告されており、AGEsが骨粗しょう症や認知症、脳卒中、心臓病、がん、関節炎などを引き起こす原因物質の1つであることが分かっています。AGEsを体内に蓄積させないようにする『抗糖化』は見た目の若々しさだけでなく、体内の健康を保つうえでも大切な要素なのです。
ワインの『抗糖化作用』に注目
これまでワインにはポリフェノールによる抗酸化作用や抗炎症作用があることが知られていました。しかし最近、新たに『抗糖化作用』の健康機能もあることをモトックスと同志社女子大学薬学部杉浦伸一教授との共同研究が明らかにしました。
これまで糖化対策(=抗糖化)は野菜やスパイス、ハーブティーなどの食品・飲料を用いたものが検討されてきましたが、杉浦教授らがワインによる抗糖化作用に注目。実証に成功したのです。
基礎研究として試験管内に糖化が起きる条件をつくり、様々な種類のワインを添加しました。ワインを添加しないときのAGEs生成率を100%とすると、白ワインでは30%前後、赤ワインでは10%以下の生成率となり糖化が抑制されました。驚くべきことにこの作用は、すでに抗糖化作用で知られていた化合物「アミノグアニジン」よりも強く、ワイン全般に強い抗糖化作用があることが分かったのです。
ワインを希釈した実験では銘柄によって抗糖化作用が大きく異なっていきました。なかでも赤ワインの一部は25倍に希釈した状態でもアミノグアニジンより強い抗糖化作用がみられました。
臨床研究として、基礎研究の中で抗糖化作用が強いと判明した赤ワイン(ラ・フォルジュ エステイト ピノ・ノワール 2019)を週6日、1日あたりグラス1杯(125 mL)飲用することで、体内のAGEsに変化があるかを検証してみました。紫外線の曝露(日焼け)や喫煙習慣、便秘、高ストレス状態によって体内のAGEsが増加することが知られています。そのため、飲用時期や性別、便通の状態、ストレスレベルの状態の違いによって結果を分析しました。その結果、女性において1日グラス1杯の飲用で、体内のAGEsを減少させるのに有用である可能性が示唆されたのです。
続く研究結果も期待されています
現段階ではワイン中のどの物質が抗糖化作用に寄与しているかは定かではありません。これまでにポリフェノールに抗糖化作用があることは知られていましたので、ワインのポリフェノールが一因であることは間違いないといえます。ただし、ポリフェノールの少ない白ワインにも強い抗糖化作用があることから他の要因もあると考えられていて、さらなる研究が期待されています。
※ワインはお酒である以上、適正な量があります。過度な飲酒はアルコールによる悪影響だけでなく、糖化を促進させてしまうという報告もありますので自分や周囲の人を守るために適正な飲酒を守りながらお楽しみください。
参考文献
Brownlee M, Vlassara H, Kooney A, et al., Aminoguanidine prevents diabetes-induced arterial wall protein crosslinking. Science, 1986; 232: 1629-1632.
Sugiura S, Iwata Y, Hirano S, et al., Effect of Red Wine on AGEs in Blood. Glycative Stress Research, 2023; 10: 164-170.
Yeh WJ, Hsia SM, Lee WH, Wu CH, Polyphenols with antiglycation activity and mechanisms of action: A review of recent findings. Journal of Food and Drug Analysis, 2017; 25: 84-92.
エイジングケアワイン研究所/2024.1.11閲覧
https://www.kotoka.jp/