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古代の物語を紡ぐアラビア模様のシチーリアワイン

古代の物語を紡ぐアラビア模様のシチーリアワイン

アラビア芸術をワインのラベルに使っているワイナリー「フェウド・アランチョ」。アラブとイタリアデザインが融合したシチーリアの歴史を紐解きます。

地中海の中心に位置するシチーリアはイタリアだけではなく、ギリシャやアラブの文化が色濃く残り、多様な文化を形成している島だ。

3,000年もの間、様々な民族によって入れかわり立ちかわりで統治され、この島の歴史が作られてきた。
古代ギリシャ人にはじまり、ローマ人、アラブ人、ノルマン人、スペイン人、フランス人と、たすきをつなぐように支配者から支配者へ手渡されてきたのである。
1860年、シチーリア王国の占領に成功したガリバルディがイタリア統一運動をはじめ、翌年に成立するイタリア王国へ統合された。

現在の州都は「パレルモ」。アラブ・ノルマン王朝時代の栄華のあとが残る、活気ある港町だ。
町にそびえるノルマン王宮は州議会のおかれている建造物で、9世紀にアラブ人が建築した城を12世紀にノルマン王達が拡大強化した。装飾の中にはこの時代にも活躍していたイスラム文化の職人によるものが残されている。

アラブ人はまた、シチーリアの名物料理「アランチーニ」(島で愛されているチーズ入りライスコロッケ。もともとはパレルモの名物料理だった)に不可欠な“米”をもたらした。
やはり9世紀にシチーリアへ伝わって、19世紀頃までさかんに栽培されていた。こういった背景はシチーリアの文化とアラブが切っても切れない関係であることを物語っている。

そんなシチーリアに、アラビア芸術をワインのラベルに使っているワイナリーがある。パレルモ空港から南に車を1時間ほど走らせたところにある「フェウド・アランチョ」がそれだ。
ワイナリーのあるラグーザ地区がアラブ勢力に支配されていた時代に使われていた陶器の絵柄がデザインのベースになった。

イスラム教は偶像崇拝を禁じているため、礼拝堂(モスク)に人物のモニュメントが置かれることはない。そのため幾何学文様の「アラベスク」が発展した。規則的にくり返されるパターンは、無限や、秩序、統合など、イスラムの世界観・精神性を表現している。
2001年設立のフェウド・アランチョはこの伝統的なアラベスクに金色の箔をあしらって、美しいワインラベルを作った。アラブとイタリアデザインの融合だ。

ワイナリーでは様々なブドウが育てられており、ワインのラインナップが豊富だが、注目すべきはなんといってもシチーリアの地ブドウを使った3銘柄だろう。赤のネロ・ダーヴォラ種、白のインツォリア種、そしてグリッロ種だ。

ネロ・ダーヴォラは島の南東にあるアーヴォラ(Avola)を原産地とする説が有力で、イチゴやカシスなどのアロマ。果実味豊かで、酸は比較的穏やか、旨みたっぷりのジューシーな味わいである。その親しみやすい味わいは、島の陽気な雰囲気をそのまま表わしているかのようだ。

インツォリアは別名アンソニカとも呼ばれ、白い花のような清々しい香り。やはりフルーティで親しみやすい。レモンのようなキリっとした酸をそなえていて、島を囲む海の幸にとってすばらしいパートナーになる。

グリッロは、畑に実が落ちたときにその糖度の高さにひかれてやってくる“コオロギ”という意味。モモや洋ナシのような熟れた果実を思わせる、フルーティな白ワインだ。これらのブドウはいずれも古代ギリシャ統治時代にシチーリアに伝わったとされる。

これらの銘柄を飲んでいると、シチーリアとアラブ、そして古代ギリシャの関係を誰かに披露したくなってくる。
飲み手の知識欲を満たしてくれるオマケがついて、味わい以上に価値あるワインだ。
気軽に自宅のテーブルで楽しむことができるので、これらのストーリーを肴に「フェウド・アランチョ」の陽気な酔い心地を楽しんでみてはいかがだろうか。アラベスクの美しいエチケットがテーブルに華に添えてくれるに違いない。

ご紹介したワイン「フェウド・アランチョ」はこちら

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