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ワインのキホン

産地別の解説つき『カリフォルニアワイン』おすすめ銘柄

産地別の解説つき『カリフォルニアワイン』おすすめ銘柄

カリフォルニア州には約5,900のブドウ栽培農家があり(2022年時点)、アメリカ合衆国のワイン総生産量のうち約80%を占める重要な州となっています。ブドウのみならず農業が重要な産業となっていて、海の影響の大小で様々な表情が見られる自然環境です。

超高級~普段用まで。ラインナップが豊富!

カリフォルニアはIT産業の最先端『シリコンバレー』で有名ですが、国内最多の人口に加えて広大な農地誇る州です。海に面した南北1,300kmにも及ぶ広大なエリアでブドウが栽培されており、地域ごとに様々なワインが生産されています。アメリカ高級ワインの代名詞『ナパ』にはじままり、スーパーマーケットでも手に入るリーズナブルな紙箱の大容量銘柄までがカリフォルニア州で生産されています。

1本1,000円台でも充分なコクのある赤ワインから…

「ナパ・ヴァレー」の高級ワインまで、ラインナップ豊富!

カリフォルニアワインの味は?

温暖な地中海性気候から生まれる重厚なカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインがカリフォルニアの特徴です。このスタイルは1970年以降、長らく続いてきましたがよりソフトでエレガントなスタイルのワインや、一部の冷涼産地で生まれるピノ・ノワールシャルドネの評価も高まってきてきました。リーズナブルながら力強い味わいのジンファンデルプティ・シラーといった品種も魅力的です。

流行の発信地

カリフォルニアでは「流行」も常に重要な要素です。生産者も消費者も著名なワイン評論家の言葉やスコア、その他のきっかけで生まれるトレンドによって変化する傾向があります。例えば最近では『バタリー』と呼ばれる濃厚な果実味をもったシャルドネに樽の風味をふんだんに効かせたスタイルが注目を集めています。

カリフォルニアのブドウ品種

栽培されている主なブドウ品種はこのようになっています。

白ブドウ

  • シャルドネ
  • フレンチ・コロンバード(コロンバール)
  • ソーヴィニヨン・ブラン
  • ピノ・グリ など

『コロンバール』はコニャックに使用されるフランス原産のブランデー用品種で、カリフォルニアでは大量生産の白ワインとスパークリングワインの原料になります。

黒ブドウ

  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • メルロー
  • ジンファンデル
  • ピノ・ノワール
  • シラー など

『ジンファンデル』は南イタリアのプーリア州の「プリミティーヴォ」と同一の品種です。生産量は多くありませんが、『プティ・シラー』もワイン好きの間で話題になる品種のひとつ。フランス原産のシラーの子品種で誤った名称で持ち込まれ、それがスタンダードになって広まりました。

バラエティ豊かな土壌

カリフォルニアの地形は逆方向に動く2つのプレートが作り出した独特の形をしています。海岸沿いの山脈の切れ目、内陸のシエラネバダ山脈の間に平野部がありブドウが育てられています。プレートの移動が地震を多発させ、土をミックスしたためローム質、火山灰堆積土、石灰土、粘土、砂礫などが入り混じった多様な土壌がみられます。

海が畑に大きく影響する

カリフォルニアは概ね温暖~暑いといえる州です。ワイン産地を観察する場合、その多くの場合「緯度」による気温差によって産出されるブドウのキャラクターが変化します。しかしカリフォルニアでは緯度よりも畑と海(太平洋)との間に何があるかが大切です。「山」が、海から畑に流れ込んで暑さを和らげる「風」や「霧」を遮るからです。

1,200m級の海岸山脈と、160~200km内陸にあるエラネバダ山脈がカリフォルニア州の肝です。

太平洋は海水がとても冷たいため、夏の間は沖合に絶えず霧が発生します。
同時に内陸は気温が高くなって空気が上昇し、そこに引っ張られた海の冷たい空気が海岸山脈の切れ目を通って入り込みます。

サンフランシスコ湾付近から吸い込まれた冷気は非常に速い速度で流れていき、海岸から240km内陸のシエラネバダ山麓の気候にまで影響を与えます。天然の空調設備ように内陸の気温を下げる海の空気は、途中で渓谷によって流れを変えるため、たくさんの微気候ができます。銘醸地である『ナパ』『ソノマ』のような湾に近い畑は冷涼な気候になります。

産地ごとの解説

カリフォルニアのワイン産地は大きく6つに分けられます。その中にAVA(American Viticultural Areas=米国政府認定ブドウ栽培地域)があり、一定の地理的・気候的なブドウ栽培条件をもつとされるエリアの境界線があります。

銘醸地『ナパ』『ソノマ』を擁する『ノース・コースト』
有名ワイナリーを輩出している『セントラル・コースト』

2産地は特に重要です。

ノース・コースト

ナパ、ソノマを筆頭に高品質で小規模なワイナリーが集中する最も重要なエリアです。

メンドシーノ

ノース・コーストで最も北側にあり、森林の多い産地です。場所により様々な表情を見せるエリアで、海の影響が強い沿岸部はとくに冷涼です。内陸側はやや温暖。内陸部の北側は海の影響がほとんど届かないため大陸性の気候で寒暖差が大きくなります。
場所によってジンファンデルや、ローヌ地方、アルザス地方(ともにフランス)の品種、そしてシャルドネとピノ・ノワールなどが栽培されています。

ナパ

生産量はカリフォルニア全体の4%程度ですが、世界的に突出した品質のカベルネ・ソーヴィニョンが生産され、アメリカで最も有名なワイン産地です。シャルドネ、ピノ・ノワール、メルロー、ソーヴィニヨン・ブランなどからも高級なワインが造られています。
平野部は東西と北側が山に囲まれており、南から海の冷風と霧が吹き込みます。その影響の大小により様々な微気候ができます。

ソノマ

南側に開けた平野部に畑が広がります。ナパと同じように南からの冷風・霧に加え、左側にある山脈の切れ目からも風が入り冷涼になります。その影響の大小により気候が変わり、温暖なエリアではカベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデル、冷涼なエリアではシャルドネとピノ・ノワールが注目されます。50以上のブドウ品種が栽培され、ワイナリーも400以上ある重要産地です。

近日VT2022(希望小売価格:3,450円)に切り替わる予定です。

セントラル・コースト

※地図にありませんが、サンフランシスコの南側にある『サンタ・クルーズ・マウンテンズAVA』は、標高の高い特殊な条件のためセントラル・コーストには含まれず独立したAVAになっています。

サンフランシスコ周辺からロサンゼルス近郊まで、その距離は約400kmにも及ぶ産地です。沿岸部に冷涼な場所が多く、優良なピノ・ノワールやシャルドネの産地になっています。内陸部は乾燥した温暖な気候でカベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、ジンファンデルのほか、シラー、グルナッシュ、ヴィオニエといったローヌ地方(フランス)の品種が栽培されています。

サン・ベニート

ブドウ畑は標高670mに及び、乾燥していて冷涼です。高所にある畑は眼下に霧を見下ろす高さになるため日照に恵まれます。有名ワイナリーの『カレラ』は石灰質土壌の土地を見つけ、サン・ベニートのマウント・ハーランAVAにワイナリーを構えました。

モントレー

太平洋から冷たい空気と霧が大量に流れ込み、雨量が少なく乾燥します。ブドウの芽吹きは州の平均より2週間早く、収穫も他地域より2週間ほど長くなります。その結果世界でも屈指の生育期間の長さが特徴になります。主要ブドウ品種はシャルドネ。ピノ・ノワールやシラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなども育てられています。

サン・ルイス・オビスポ

規模の大きな産地は内陸部分にあり、西側にある山脈によって海の影響が遮られるため温暖で雨が少ないのが特徴です。カベルネ・ソーヴィニョン、メルローに加えてローヌ地方の品種も成功を収めています。もともとはイタリア系移民が植えたジンファンデルの産地で、灌漑なしに収穫できるものがあります。白はシャルドネが多く栽培されています。

サンタ・バーバラ

カリフォルニア州で最も冷涼なワイン産地があります。他地域とちがって海岸山脈が東西に走り、端部が山脈で縁取られていない南北アメリカ大陸で唯一のエリアです。海に対してむき出しの状態なので冷風と霧が直接畑に影響します。海の際まで伸びる谷はじょうごの役割をして120kmもの内陸まで冷気を運びます。
モントレーやサン・ルイス・オビスポと同様に長い生育期間がありブドウは何か月にもわたって風味と熟したフェノール分を蓄えます。ピノ・ノワールやシャルドネが主力の品種でワイナリーの『オー・ボン・クリマ』はサンタ・バーバラにあるサンタ・マリアAVAにあります。

インランド・ヴァレーズ

海岸山脈とシエラネバダ山脈の間にある広大で極めて肥沃な大地です。カリフォルニアの重要な産業農地で灌漑設備への投資が進んでいます。柑橘類や野菜・ナッツ・綿花とともにブドウが育てられており、大型のワインメーカーがひしめきます。

大きく南北に分けることができ、北部のサクラメント・ヴァレーは海岸山脈の切れ目から海の冷たい風が流れ込み、ローダイAVAを中心にリーズナブルながら品質のよいワインが造られます。南部のサン・ホアキン・ヴァレーは厳しい日照のため収量が高くなり、機械化された栽培管理と近代的なワイナリーにより世界的な巨大ブランドのワインが生産されます。

シエラフットヒルズ

内陸のシエラネバダ山脈の麓に位置します。標高1,200mにも達する場所がありインランド・ヴァレーズとは対照的に冷涼で小さな畑が多くなります。1840~50年にカリフォルニアにゴールドラッシュをもたらした地域で、その後フィロキセラ(ブドウ害虫)によって打ち捨てられていましたが、いくらか残った畑によって樹齢100年を超える古いジンファンデルの宝庫になりました。新参の生産者によって植えられたローヌ品種も成功しています。

ファー・ノース・カリフォルニア

ノース・コーストよりも北側にある山岳地帯で、手つかずの自然のなかで小さな集落や村のなかに小規模なワイン産地が点在します。

サザン・カリフォルニア

セントラル・コーストより南からメキシコ国境までに広がる産地です。温暖な気候と青空の下に輝くビーチ、誰もが思い描くカリフォルニアの風景がこのエリアです。日照量が多く暑く乾燥した地帯が多くなります。

関連コンテンツ

参考
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年

I 地勢/運輸事情調査(米国カリフォルニア州)/国土交通省/2024.5.24閲覧
https://www.mlit.go.jp/common/001285024.pdf

CALIFORNIA’S WINEGROWING REGIONS/WINE INSTITUTE/2024.5.22閲覧
https://wineinstitute.org/wp-content/uploads/2024/04/Map.152AVAs.Poster.18x24.V01.High_.pdf

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