※このコンテンツには オーガニック/有機 両方の表記がございますが、同じものを指しています。
一般農法と、有機農法(オーガニック)の違い

畑での話
一般農法のブドウ畑では、虫や病気を駆除して健全なブドウを収穫するために化学合成製品を使用します。化学製品はブドウの均一な成熟を促進するのに効率よく働きます。
一方、有機農法の畑では無害な虫も、害虫も共存させています。いくつかの制限された「方法」で、持続可能な自然な生態環境の創造を目指します。ここでいう「方法」はブドウの樹に無害なものだけです。生態環境を作るには、隣接するブドウ畑で使用される農薬の飛散から影響を受けないように、広い土地で作業する必要があります。

ワイン造りの話
一般的なワインは、苦味のような官能特性の調整やスパークリングワインの泡立ち、酒石安定化を促進する目的で化学合成添加物の使用が認められています。
有機ワインの場合はいかなる種類の化学合成製品も添加することはできません。望ましいワインを造るには自然な方法のみを用います。これがなかなか大変で、ワインの悪化を徹底的に予防する環境で作業し、製造中のワインに起こる変化を常に確認し続けることが大切になります。
有機農法で利用できる物質

様々な必要性に応じて多様な化学製品を使用できる一般農法とは異なり、有機生産者が利用できる数少ない「武器」は硫黄、そして銅のような鉱物質です。また、交信かく乱などの特定の技術、および手作業にも頼ります。
銅
銅はブドウ樹の病気を予防するために使用されます。真菌性および細菌性の病気に効果があります。
硫黄
硫黄は殺菌剤として機能するため、畑ではうどんこ病などのブドウの病気の防除に非常に有用です。ワイン造りでも主に殺菌の役割で使用されます。
ベントナイト
粘土鉱物であるモンモリロナイトが主成分です。降雨後の畑で残留水分を乾燥させ、湿気による病気リスクを減らすために散布します。
オレンジの皮
オレンジの皮もべと病やうどんこ病に対してよく効き、ブドウ畑の虫量の制御にも役立ちます。
松ヤニ
松ヤニ由来の製品は、これまでみてきた成分の処理を持続させるための補助剤です。これらの成分が植物に付着した状態を持続させます。
交信攪乱(こうしんかくらん)
交信攪乱とは性フェロモン剤を使ってブドウ畑の生態系に有害な虫を抑制することをいいます。害虫の交尾を阻害することで繁殖を抑えることができ、有効成分が微生物等により容易に分解されるので畑への影響がほとんどありません。
手作業
一般農法で使用される化学的な乾燥剤・除草剤を使用しないために、除芽や土壌反転などを手作業で行います。
有機農法が難しい要因は何か?

「雨」の対応が大変!
有機農法で最も重要な予防手段である銅、そして有機農法で使用可能とされている他の製品は、雨で流されがちです。
そのためヴェネト州のように降雨量の多い地域では、ブドウの病気の発生を防ぐ銅の散布は降雨後に行う必要があります。
さらに、ブドウ畑に生息する捕食者と被食者の虫の数も降雨と気温によって変動します。日々モニタリングを行って、増加している場合にはフェロモン剤を散布して交信攪乱(かくらん)を発生させる必要があります。
こういった対策はタイミングが極めて重要です。わずか数時間遅れるだけで、収穫物の一部または全部が損なわれる可能性があるほどシビアです。
手間がかかる!
適したタイミングでの対策は、ブドウ畑の管理担当者が、毎年4月から10月まで、事実上ほぼ毎日働く必要があることを意味します。
土曜日の午後に雨が降った様子を想像してみましょう。
ワイナリーの経営者は、雨が明日の朝は晴れるだろうと、ブドウ畑での作業の手伝いを依頼するために作業員へ連絡します。しかし週末に会社からの急な連絡を受けた作業員は、いつでも仕事できるように待機しているというわけではありません。
こういったリソース問題や、管理の難しさから、北イタリアの多くのワイナリーは有機農法を断念していっているケースが多いようです。
当社のような家族経営のワイナリーは経営者自らがブドウ畑の管理に直接携わっているため、現在でも有機農法を続けられています。
畑の形状も大切
先に述べたとおり、降雨後の対応は非常に重要です。たとえば丘陵地帯で有機農法を行うワイナリーは、傾斜した降雨後の滑りやすい足場での作業が必要になります。こうなると適時的な対応は難しいでしょう。
当社を含めて平地だけにブドウ畑を所有する生産者は、畑での作業の多くを機械化することで降雨後すぐの対応ができています。
「銅」は特別管理

畑で使用する『銅』は重金属にあたります。必要以上に使用すると土壌を汚染し、生産性を低下させる可能性があります。その影響を少なくするために、私たちはブドウ樹に付着しなかった銅を回収する機械を使用しています。ブドウの生育サイクル初期段階では、使用した銅のうち約80〜90%を回収することができます。
水酸化銅の使用も有効です。
他の銅ベースの資材に比べて非常に小さな分子で、植物に効果的に付着します。その結果使用量は極めて少なくなります。こうやって畑に散布する銅の量、即ち土壌に残留する銅の量を大幅に減少させています。
「オゾン」を活用

合成添加物が使用不可のため、ブドウを絞った『マスト』(発酵初期で雑菌に汚染される可能性が高い状態)などの段階で問題が発生した場合に化学的な手段で対応することはできません。
このため、醗酵中に外部微生物の干渉がないよう、可能な限り清潔で無菌的な環境で作業することが重要です。事前にあらゆる問題の発生を可能な限り予測し、それらを防ぐ段取りを立てておくことがカギとなります。
醸造所を徹底的な清掃し、収穫前にはオゾンを生成する機械で殺菌作業を行います。オゾンは天然に存在する分子で、病院などで使用されています。これで醸造所にいる微生物の99%を殺菌できます。
これが、なるべく自然な醗酵を可能にする手段のひとつと考えています。

化学製品なしで育ったブドウは熟成が不均一になります。一房の中に完熟している粒と、未熟なものが混在した状態です。ブドウの房が自然に同じタイミングで完熟することはありません。
完熟していない、または病気で傷ついた粒は、ワインに悪影響を与え、品質を低下させます。
この問題を解決するためにはブドウを房単位ではなく、粒単位で収穫するのが対策のひとつです。マートでは完熟した粒だけを収穫できる機材を使用して、健全なブドウのみで有機ワイン造りを行っています。
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参考
交信かく乱剤/日本生物防除協議会/2026年11月27日閲覧
https://biocontrol.jp/information/pheromone/koshin_kakuran.php


