マシャレッリとは
マシャレッリは、イタリア・アブルッツォ州を代表するワイナリーのひとつです。
創業者ジャンニ・マシャレッリ氏は、アブルッツォでいち早くグイヨ仕立てを導入し、ワインの熟成にフレンチオークを取り入れるなど、この土地のワインの品質向上に大きく貢献してきました。
アブルッツォという土地と、モンテプルチアーノやトレッビアーノといった品種の可能性を信じ、世界にその価値を伝えてきた存在です。
現在は妻のマリナ・ツヴェティッチ氏と、長女のミリアム・リー・マシャレッリ氏がその想いを受け継ぎ、新たな挑戦を続けています。
畑を見渡す「考える部屋」
今回の訪問で最初に案内していただいたのは、ワイナリーから車で数分ほどの場所にある小さな建物でした。
大きな窓の向こうには、一面にブドウ畑が広がります。

マリナさんいわく、ここはさまざまなことを「考える部屋」。
インターネットもテレビも携帯電話も使わず、デジタルから離れて過ごすための空間なのだそうです。
静かな室内から畑を眺めていると、不思議と時間の流れがゆっくりになったように感じました。日常から少し離れ、じっくりと思考を巡らせるための、静かな時間が流れる空間でした。
同じ畑でも収穫時期を変えるモンテプルチアーノ
「考える部屋」のすぐ下には、約8ヘクタール、標高約400mのモンテプルチアーノの畑が広がっています。
興味深かったのは、同じ畑のブドウでも、造るワインによって収穫時期を変えていること。

チェラスオーロ用のブドウは10月上旬頃、赤ワイン用は11月頃に収穫。
特にチェラスオーロは、狙った色調に仕上げることが難しいワインなのだとか。「ロゼというより、軽やかな赤ワインだと思ってほしい」という言葉が印象に残りました。
ワイナリーの本拠地があるキエーティ県サン・マルティーノ・スッラ・マルチーナ周辺は、土壌中に豊富な水分が含まれているため、基本的に灌漑を必要としません。
近くに小川が流れる畑もあり、サワガニや蛍が見られるほど水が豊かで美しい環境なのだそうです。
未来を見据えて選ばれた畑

畑を歩きながら聞いた話から特に強く感じたのが、ジャンニ・マシャレッリ氏の卓越した先見性。
アブルッツォでいち早くグイヨ仕立てを導入し、フレンチオークによる熟成に取り組んだジャンニさんは、この地域のクオリティワインのパイオニアとして知られています。
近年は温暖化の影響から高標高や北向きの畑への注目が高まっていますが、そうした優良区画の多くをすでにジャンニさんが取得していたとのこと。その判断力は、まさに未来を見据えた投資だったといえます。
ワイン造りの中心にある「畑」
マシャレッリでは4県にまたがる畑を所有していますが、セラー担当が数名であるのに対し、畑では常時約60人規模のチームが作業を行っています。
それだけ畑での仕事を重視していることが伝わってきました。
訪れた畑では、ブドウの樹の周囲にたくさんの草花が生えていました。その種類は30以上にもなるそうです。

自然に近い環境の中でブドウを育てることを大切にしており、山と海の両方から風が届きます。
実際に畑に立ってみると、強い日差しの中にも心地よい風が吹き抜けていました。
畑を眺めながら味わう「ヴィッラ・ジェンマ チェラスオーロ」
畑での見学後は再び「考える部屋」へ戻り、軽食とともにヴィッラ・ジェンマ チェラスオーロを試飲しました。


目の前に広がる鮮やかな緑の畑を眺めながら味わうワインは格別です。
日本で何度も飲んだワインでしたが、この土地で飲むことで新たな魅力を発見することができました。まさに「再確認」ではなく「再発見」と呼べる体験でした。

セラー見学
続いて、マシャレッリのセラーを見学しました。
シャルドネ
シャルドネの熟成には複数メーカーのトノーやバリックを使い分けていました。
樽ごとに風味の付き方が異なるため、毎月すべての樽を試飲して状態を確認しているとのこと。新樽だけでなく、2年目や3年目の樽の方が風味が強く出る場合があり、過度な樽香にならないよう細心の注意が払われていました。

トレビアーノ
地下には「マリナ・ツヴェティッチ トレビアーノ」専用の熟成セラーがあります。
マイエッラ山の石を積み上げて造られたこのセラーは完成まで約10年を要したそうです。
石を伝って地下に水が巡ることで理想的な湿度が保たれています。
低収量で丁寧に栽培されたマシャレッリのトレビアーノは、一般的なイメージとは異なり非常にガストロノミック。美しい酸を持ち、長期熟成にも適しているといいます。
熟成によってアーモンドのような香りが現れるという話が印象的でした。

古城「カステッロ・ディ・セミヴィーコリ」
セラー見学後は、マシャレッリが所有する古城「カステッロ・ディ・セミヴィーコリ」を訪問しました。
現在は宿泊施設を備えたワインリゾートとして運営されており、アブルッツォの美しい景色と歴史を体感できる特別な空間となっています。


マシャレッリのワインをテイスティング
古城では、マシャレッリのさまざまなワインをテイスティングしました。

マリナ・ツヴェティッチ トレッビアーノ
グラスに注いでしばらく置いたら、アーモンドのような香ばしい香りがしてきました。
ローストした野菜やグリルした魚、白身肉、ハードチーズなど、幅広い料理と楽しめます。
マリナ・ツヴェティッチ シャルドネ
クリーミーさや旨みを持つ料理と好相性。
だし巻き卵や親子丼、バターやマッシュルームを使ったパスタ、ドリア、チーズリゾットなど、日本の食卓でのペアリングが考えられそうです。
リネア・クラッシカ ロザート
直接圧搾で造られる、フレッシュで親しみやすいロザート。
ミリアムさん自身も自宅に常備しているお気に入り。
ヴィッラ・ジェンマ チェラスオーロ・ダブルッツォ スペリオーレ
畑でも味わったチェラスオーロを、改めてテイスティング。
雲丹や帆立のカルパッチョのほか、ミラノ風カツレツ、トマトベースのパスタ、ビネガーやハーブを使った料理など、非常に幅広い料理との相性が考えられます。
ロゼという枠にとどまらない、食中酒としての懐の深さを感じる一本です。
リネア・クラッシカ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ
マシャレッリを代表する品種、モンテプルチアーノを気軽に楽しめる一本です。
マリナ・ツヴェティッチ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ リゼルヴァ
5つの区画で造られたワインをそれぞれブラインドテイスティングし、その後ブレンドして仕上げられます。
アラビアータなど、少し辛みのある料理にもおすすめです。
マリナ・ツヴェティッチ メルロー
メルローを栽培しているのは、アブルッツォ州内でも山側で標高が高いラクイラの畑のみ。
他のエリアとは異なる特殊な環境を持ち、モンテプルチアーノでは求める熟度に達しにくい場所のため、メルローの個性が生かされています。
ヴィッラ・ジェンマ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ リゼルヴァ
専用の単一畑から造られる、マシャレッリを象徴するワインのひとつです。
畑は昼夜だけではなく季節間の寒暖差も非常に大きく、夏には40℃近く、冬には氷点下になることもあります。
モンテプルチアーノは非常に力強い品種ですが、マシャレッリが目指しているのは、単純に濃厚なだけのワインではありません。
エレガントさを備え、まっすぐ「縦に伸びていく」ようなワインを造りたいと考えているそうです。
収穫年から5年以上の時間を経てリリースされるこのワインには、長い熟成の中で生まれる変化と進化が表現されています。
ワイン単体でじっくりと味わうのも良し、お肉料理やジビエ、熟成チーズ、さらには食後にダークチョコレートとのペアリングもおすすめです。
夕暮れのアペリティーボからディナーへ

テイスティングを終える頃には、夕日が沈み始めていました。
古城の畑を目の前に、美しい夕暮れの光を浴びながらアペリティーボを楽しみます。
その後マリナさんも合流し、城内の大きな円卓を囲んでディナーとなりました。
食事の終盤、マリナさんから私たちに、
「日本市場で、マシャレッリをさらに広げていくためには何が必要だと思いますか?」
と問いかけがありました。
参加したスタッフがそれぞれ率直な意見を伝えると、マリナさんも一つひとつの意見に対して自身の考えを返してくださいました。
生産者と直接意見を交わすことのできる、とても貴重な時間でした。
その会話から伝わってきたのは、マリナさんがマシャレッリのワインに持つ強い想いと誇り、そして品質への揺るぎない自信でした。

ジャンニさんから受け継がれる、挑戦する心
今回の訪問では、「考える部屋」から畑、セラー、そして古城まで、マシャレッリが描く壮大な世界観を体感することができました。
畑を何よりも大切にする姿勢、未来を見据えた挑戦、そしてジャンニさんからマリナ・ツヴェティッチ氏、ミリアム・リー氏へと受け継がれる情熱。そのすべてがワインの品質と個性につながっているを実感しました。
ギャラリー

(マリナさんのご自宅)

ココ(愛犬)

(日差しが強い畑で、さっと渡してくださった帽子)

(移動中に立ち寄った施設)



(柳が巻かれたバリック)



(古城から見える景色)




