アジィエンダ・アグリコーラ・レ・マッキオーレとは
アジィエンダ・アグリコーラ・レ・マッキオーレ(以下 マッキオーレ)は、トスカーナ州ボルゲリで唯一農家がはじめたワイナリー。

当時、この地域でワイナリーを所有していたのは貴族が中心でした。その中で、初代オーナーである故エウジェニオ・カンピオルミ氏と妻のチンツィアさんは、農家からスタートした唯一の生産者として挑戦を始めます。「ボルゲリ生まれ、ボルゲリ育ち」のワイナリーとして土地と共に歩み続けてきた歴史は、今もマッキオーレの大きな誇りとなっています。
畑から始まる品質へのこだわり

農家出身の創業者が立ち上げたマッキオーレ。その品質へのこだわりは、まず畑づくりから始まります。
畑は海から約4〜7kmという理想的な距離に位置し、海から吹く風がブドウ畑を巡ります。この海風は畑の環境を健全に保つだけでなく、気温の急激な上昇を和らげる役割も果たしています。また、海面からの反射光によって日照時間にも恵まれ、ブドウはゆっくりと成熟していきます。

実際に畑へ立つと、心地よい海風と力強い太陽の光が印象的でした。自然条件に恵まれたこの環境が、マッキオーレの品質を支える大きな要素となっています。
さらに、畑の管理はすべて自社スタッフによって行われています。長年畑と向き合う専門チームが日々ブドウの状態を確認しながら育成を行うことで、高品質な原料を生み出しています。
「自分の目で確かめる」大切さ
初代オーナーの故エウジェニオさんが大切にしていたのは、「自分の目で確かめる」こと。
Casanuovaの畑では、土着品種から国際品種まで数多くのブドウ品種を植え、実験を重ねました。その結果、この土地には国際品種が特に適していることを見出し、現在のポートフォリオの礎を築きました。
現在では11の畑、合計35haまで拡大していますが、畑が各地に点在しているのにも理由があります。それぞれ異なる土壌を持つ区画を選んで取得しているためです。
同じ品種でも土壌によって異なる表情を見せるブドウ。その違いを理解し、研究を重ねる姿勢がマッキオーレの強みといえます。

(初代オーナー故エウジェニオさんが研究のために最初に植えたブドウの木)
ワイナリーの土地で今も大切に育てられています。

(海からの近さがわかる畑の地図。場所はバラバラで、すべて土壌が異なります。)
丁寧な収穫が生み出す品質
マッキオーレのこだわりは、栽培・収穫にも表れています。
このエリアでは、haあたりの年間作業時間は400時間程度と言われていますが、マッキオーレではその倍近い700~800時間に及ぶ年もあるとのこと。
ブドウの生育状態を見ながら細かくアプローチを調整し、非常に丁寧な栽培を行っています。
収穫期間は約1カ月半。同規模の畑であれば短期間で終えることもできますが、マッキオーレでは区画ごと、品種ごとに最適なタイミングを見極めながら収穫を進めていきます。
さらに、収穫作業は外部に委託することなく、自社の専門スタッフが担当。
同じ区画でも成熟度に応じて複数回に分けて収穫を行うため、すべての区画をあわせて、年ごとの収穫回数は20回以上に及びます。
また、収穫されたブドウはすぐに醸造へ進むのではなく、一晩温度を落ち着かせてから次の工程へと進められます。
こうした丁寧な積み重ねが、マッキオーレのワインに感じられる緻密さや品質の高さにつながっています。
気候変動への取り組み
今回訪問したワイナリーで共通のテーマとして挙げられたのが「気候変動への対応」でした。
マッキオーレでも、この課題を「自然を大切にしないと自分たちの未来はない」として真剣に捉えています。
その取り組みの一つが、環境負荷を軽減するための資材の見直しです。瓶の軽量化に加え、従来の木箱からリサイクル紙を使用した紙箱へ変更。さらに、その箱の内側にはサルデーニャ出身のデザイナーがボルゲリの風景をイメージしたデザインを施しており、環境への配慮とイタリアらしい美意識を両立させています。

(紙箱:2026年以降に入荷する一部商品に使用)
また、「自然を守るワイナリー」として、生物多様性の維持にも力を入れています。畑にはブドウだけでなく様々な植物を植えることで、多様な生態系を育み、自然環境との共生を目指しています。
さらに、「一つのワイナリーだけではなく、地域全体で取り組むことが大切」という考えのもと、地域全体の発展や環境保全にも積極的に関わっています。
進化を続ける醸造研究

Tava社のセラミック製のアンフォラや、球体の炻器製アンフォラ(せっき:陶器と磁器の中間的な性質を持つ焼き物)、その他様々な容器を醗酵・熟成に用いています。
毎年決まったレシピはなく、その年の天候やブドウの状態、造りたいワインのスタイルによって、細かな調整を続けています。
例えば、アンフォラを用いることでワインのフレッシュな果実味を残すことができるため、暑い年にはアンフォラの使用比率を上げるなどの調整を行っています。
現在も新たなアンフォラの実験を行っているとのことで、気候変動も視野に入れながら、常に挑戦を続けているワイナリーであることが非常に印象的でした。

(TAVA社製のアンフォラ)

(球体の炻器製アンフォラ)
品質を支える設備と人の力
マッキオーレの設備は決して大規模ではありません。しかし、必要な部分にはきっちりと投資を行い、品質向上につながる体制づくりを進めています。
その一例が選果工程です。2023年から選果機を導入し、より正確で安定した選果を実現しています。
一方で、瓶詰め設備は驚くほどコンパクト。瓶詰めからラベリングまでを担うスペースは決して大きくありませんが、限られた空間の中で効率よく作業が行われています。
瓶は出荷前に1本ずつチェックしていると胸を張って説明してくださいました。

テイスティングルームで感じるボルゲリの魅力

訪問の最後には、畑を見渡すことができるテイスティングルームで試飲をさせていただきました。
大きな窓の向こうにボルゲリの美しい畑が広がり、この土地の風土を感じながらワインを味わうことができます。
研究と努力を重ねながらも、訪れる人にボルゲリの魅力を伝えようとする姿勢が随所に感じられる空間でした。
農家からスタートし、畑を何よりも大切にしながら成長してきたマッキオーレ。今回の訪問を通じて、そのワインの背景にある真摯なものづくりの精神を改めて実感することができました。

ギャラリー









参考
wikipedia/炻器/2026年8月17日閲覧
https://ja.wikipedia.org/wiki/炻器