コンティ・ゼッカとは
「アジィエンダ・アグリコーラ・コンティ・ゼッカ」は、イタリア南部、プーリア州サレント半島に位置する歴史あるワイナリーです。
ゼッカ家とこの土地との関わりは500年以上前にさかのぼります。1935年からワイナリーとして本格的な醸造を開始し、現在も自社畑で栽培したブドウを自ら醸造するスタイルを貫いています。
プーリアの土着品種であるネグロアマーロの可能性を世界に示した「ネロ」をはじめ、白ワイン「ルナ」、長年愛され続ける「ドンナ・マルツィア」など、幅広いワインを手掛けています。
数多くのワインを生産する規模の大きなワイナリーですが、今回の訪問で特に印象に残ったのは、その規模とは対照的ともいえるほどの細やかなワイン造りでした。
「土地・気候・人」でワインを造る
コンティ・ゼッカがワイン造りを考えるうえで大切にしているのが、「土地(Terroir)・気候(Climate)・人(People)」という3つの要素です。

土地(Terroir)
それぞれの区画が持つ個性を尊重すること。
気候(Climate)
人がコントロールできない自然条件に合わせ、その年ごとに柔軟な醸造を行うこと。
人(People)
土地と気候の魅力を最大限に引き出すクラフトマンシップ。
「ワインは単なるアルコール飲料ではなく、その土地を表現し繁栄させる液体である」という考え方は、ワイナリー全体に浸透していました。
大量生産を行う規模を持ちながらも、一つひとつのワインに対して妥協のない姿勢を貫いている点が非常に印象的でした。
500年以上続くゼッカ家の歴史
コンティ・ゼッカの歴史は500年以上前にまで遡ります。
長きに亘る地域の農業への貢献が認められ、ゼッカ家は1884年にローマ教皇レオ13世より伯爵(Conti)の称号を授かり、1935年から本格的なワイン造りを開始しました。現在も一貫して自社畑・自社醸造を貫いています。
主力ブランドである「ドンナ・マルツィア」は50年以上も販売され続け、2021年にはイタリア政府より歴史的ブランドを意味する「Marchio Storico」に認定。また、フラッグシップワイン「ネロ」は数々の高い評価を獲得し、プーリアを代表するアイコンワインとして知られています。
さらに、イタリアワインガイド『ガンベロ・ロッソ』最高評価の「トレ・ヴィッキエーリ」を10回以上獲得している、プーリアを代表するスターワイナリーでもあります。
2つの海に囲まれたサレントのテロワール
コンティ・ゼッカが位置するのは、イタリア半島の“かかと”にあたるプーリア州サレント半島。
夏は非常に暑くなる地域ですが、その暑さを和らげてくれるのが、サレント半島を挟むイオニア海とアドリア海です。
二つの海から吹く風が畑を通り抜けることで、
・夏場の過度な高温を和らげる
・湿気を抑えて病害の発生を防ぐ
という恩恵を受けています。
クリュワインに使用されるクリュ(畑)は、レヴェラーノ、ヴェーリエ、サリーチェ・サレンティーノの3地区に点在。それぞれ異なる土壌特性を持ち、栽培される品種やワインスタイルに大きく影響しています。

レヴェラーノ(Leverano)

レヴェラーノでは、砂・シルト・粘土がバランスよく混ざった土壌が見られます。
一部には酸化鉄を豊富に含む「テラ・ロッサ」と呼ばれる赤土が分布しています。
水分や養分を保持する力に優れており、白ブドウ・黒ブドウのどちらにも適した環境。ワインに複雑味や骨格を与えてくれる土壌です。
ヴェーリエ(Veglie)

ヴェーリエは、シルト質ロームを中心とした水はけのよい土壌。
余分な水分が根の周囲に滞留しにくく、健全なブドウ樹を育てやすい環境です。
根が深く伸びやすいため、水分や養分を安定して吸収でき、ブドウの均一な成熟につながります。
ロゼワイン用のブドウや、「リフージョ」に使用するプリミティーヴォなどの栽培に適しています。
サリーチェ・サレンティーノ(Salice Salentino)

サリーチェ・サレンティーノには、深く肥沃な粘土質ロームの土壌が広がっています。
保水力と養分を保持する力に優れ、雨の少ない夏でもブドウ樹へ安定して水分を供給できます。
果実がゆっくりと均一に成熟するため、力強く凝縮感のある赤ワイン用品種に適した土地。
ネグロアマーロ、アリアニコ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどが栽培され、フラッグシップワイン「ネロ」に使用するブドウも、このエリアで育てられています。
品質の鍵を握る「収穫」の見極め
コンティ・ゼッカで最も重要視しているのが収穫タイミングの見極めです。
収穫時期は品種や区画、ヴィンテージによって異なり、早い年では7月末頃から始まります。
判断材料となるのは、
・糖度
・酸度
・ポリフェノール量
・フェノール成熟
といった複数の要素。
近年は気候変動の影響で糖度だけが先行して上昇し、フェノール成熟が追いつかないケースが増えているため、従来以上に詳細な分析が求められているそうです。
印象的だったのは、この規模のワイナリーにもかかわらず、収穫はすべて手摘みで行われていること。
施設内には2つの分析ラボが設置されており、収穫判断だけでなく、醗酵中や熟成中の品質管理にも活用されています。

大規模ワイナリーを支える醸造設備
ワイナリー内には、さまざまな醸造設備が備えられています。
ステンレスタンクとセメントタンク

醗酵にはステンレスタンクとセメントタンクを使用。
白ワインやロゼには管理性に優れるステンレスタンクを、上級赤ワインには温度変化が穏やかなセメントタンクを採用しています。
中には1930〜1950年代から使われ続けているセメントタンクもあり、長年にわたり大切に維持されていました。

ワインに合わせて使い分ける4種類の圧搾機

用途に応じて4種類のプレス機を保有。
白ワインでは高性能な真空プレスを使用し、酸化を抑えながら果実のフレッシュさを引き出します。
また、果粒のみを処理するプレスや専用設計の二層式タンクなどが導入されており、大規模生産の中でもきめ細やかな醸造管理が行われていました。
気候変動に合わせて変化する樽熟成

気候変動に対応しながらワインの品質を維持するため、樽についても毎年細かな試験を実施しています。
そのため毎年、樽の種類・容量・トーストの強さを細かく検討し、そのヴィンテージに最適な熟成方法を探っています。
トーストの強さが異なる複数の樽を購入し、小規模な試験を実施したうえで採用を決定。
近年は、ワインに強いロースト香がつきすぎないよう、低温でトーストした樽を積極的に取り入れています。
さらに2024~2025年頃からは、アカシア樽も導入。
アカシア樽を使用することで、オークとは異なる華やかな花の香りや、よりエレガントな印象をワインに与えられる点を評価しているそうです。
アンフォラで表現する新しいスタイル

近年では、様々な種類のアンフォラも積極的に活用しています。
アンフォラを使う目的は、大きく二つ。
ひとつは樽香を付けずにワインを熟成できること。
もうひとつは、容器を通してごくわずかな酸素を取り込む「マイクロオキシジェネーション」によって、ワインの質感を柔らかくすることです。
複数メーカーのアンフォラを使い、焼成温度による酸素透過性の差を活用。
それぞれのアンフォラで熟成したワインを、最後にブレンドしていました。

気候と市場に合わせ、ワインも進化する
気候変動によって、ワインの熟成スピードにも変化が生まれています。
例えば、「ネロ」の場合、十分な成熟感を得るために約12か月の熟成が必要でしたが、現在では6か月程度で同様の成熟感が得られるようになっています。
畑では、糖度だけが早く上昇してフェノール成熟が追いつかないケースがあるため、ブドウの収穫時期や熟成方法については毎年見直しを行っています。
また、市場では「購入後すぐに楽しめるワイン」を求める消費者が増えていることから、ワインスタイルも市場に合わせて調整しています。
「エレガンス」を追求するワイン造り

ポリフェノールや酸を維持しながら口当たりを柔らかくするため、ワインを澱とともに熟成させるシュール・リーや、澱を攪拌するバトナージュを細かく調整し
・タンニンをより丸く感じさせる
・酸化耐性を高める
・ワインのエレガンスを引き出す
といった効果を狙っているとのこと。
テイスティングで知るコンティ・ゼッカ
数多く試飲したワインの中から、特に印象的だったものをご紹介します。

ドンナ・マルツィア
50年以上販売されている、コンティ・ゼッカを代表するロングセラーブランド。
「ドンナ・マルツィア」という名称は、ゼッカ家のメンバーの名前にちなんだ農業施設に由来しています。
(写真はシャルドネ オーク樽熟成)
ルナ
「プーリアでも世界レベルの白ワインを造ることができる」。
その可能性を示すために誕生したのが「ルナ」です。
ブルゴーニュのシャルドネを参考にしながらも、マルヴァジーアをブレンドすることで、プーリアらしい個性を表現しています。
レヴェラーノの区画で収穫したブドウは、手摘み後すぐに冷却。
フリーラン果汁を中心に使用し、バリックで約1カ月かけてゆっくり醗酵させます。醗酵後は週1回程度バトナージュを行い、最後にステンレスタンクで全体を整えます。
おすすめの料理は、アクアパッツァやトマトを使った魚介料理。
カラヴェント
レヴェラーノで育ったマルヴァジーアとフィアーノから造られるオレンジワイン。
2024ヴィンテージからはフィアーノを40%使用するようになりました。
厳しい選果を行ったブドウを約6カ月間マセラシオンし、100%マロラクティック醗酵を実施します。
果房全体ではなく果粒のみを使ったマセラシオンへ変更されました。
訪問時には2023年と比較してテイスティングすることができました。
果粒のみを使用することで果梗由来のフェノール感が抑えられ、よりクリーンで洗練された印象に仕上がっていることが感じられました。
脂がのった魚や刺身などとのペアリングがおすすめです。
ネロ

コンティ・ゼッカを象徴するアイコンワイン「ネロ」。
サリーチェ・サレンティーノの区画で育つブドウを使用し、気候変動に合わせて熟成期間や樽使いを毎年細かく調整しています。
気候変動や現在の市場を意識しながらエレガントなスタイルへ進化させたことで、昔に比べて若いうちから楽しみやすくなっている一方、熟成ポテンシャルはむしろ高まっているとのこと。
今回は、2022年、2012年、2007年の垂直試飲という貴重な機会にも恵まれました。
2022年は若いヴィンテージながらすでに楽しめるバランスを持ち、その奥には長期熟成への可能性も感じられます。
一方、2012年、そしてマグナムボトルの2007年も、熟成を経ながら現在も素晴らしい酒質を保っていました。
異なる年代を一度に味わうことで、「ネロ」が単に濃厚で力強い南イタリアの赤ワインではなく、長い時間の中で複雑に変化していくプーリアのグラン・ヴァンであることを体感できるテイスティングとなりました。

プーリアの食文化を楽しむランチタイム
テイスティングの後はワイナリーから少し移動し、緑に囲まれたお屋敷のプールサイドでランチをいただきました。
ここからは、現地で味わったプーリア料理の一部をご紹介します。
タラッリーニ(Tarallini)
南イタリアで親しまれている、リング状の固焼きスナック。
小腹が空いたときのおやつに、アペリティーヴォ(食前酒)のおつまみとしても定番です。
フリセッレ/フリセッリーネ(Friselle / Friselline)
プーリアを代表する二度焼きの乾燥パン。
水で軽く戻し、トマトやオリーブオイルなどをのせて食べます。
小型の「フリセッリーネ」は、一口サイズのおつまみや前菜としても親しまれています。
フォカッチャ・バレーゼ(Focaccia Barese)

プーリア州の港町バーリを代表するフォカッチャ。
たっぷりのエクストラバージンオリーブオイルとフレッシュなトマトを使った、シンプルながら力強い味わいです。
コッツェ・グラティナーテ(Cozze Gratinate)

プーリアはイタリア屈指のムール貝の産地。
ムール貝にパン粉、パセリ、チーズをのせ、オーブンで香ばしく焼き上げた定番料理「コッツェ・グラティナーテ」をいただきました。
海に囲まれたプーリアならではの食文化を感じる一皿です。
オレッキエッテ(Orecchiette)

「小さな耳」という意味を持つ、プーリアを代表するショートパスタ。
中央にくぼみがある独特の形によって、ソースがしっかりと絡みます。
じっくりローストして甘みを引き出したトマトに、溶かしたカチョカヴァッロチーズを合わせたソースでいただきました。
そのほかにも、トマトとアンチョビのシンプルなサラダ、リコッタチーズと甘エビ、ズッキーニを使ったオープンサンド、フルーツをたっぷり使ったタルトなど、プーリアの食材を存分に楽しみました。

ワインだけではなく、その土地の料理と一緒に味わうことで、コンティ・ゼッカのワインが生まれる土地をより身近に感じることができました。
ギャラリー










