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ワインのキホン

『シェリー樽』とは?シェリーの本場へレスがアツい

『シェリー樽』とは?シェリーの本場へレスがアツい

シェリー酒はスペイン南端にあるアンダルシア州へレス周辺で造られる特産のワインのこと。世界中で人気ですが、お酒だけではなく生産に使われる『樽』も人気。今や世界から引っ張りだこです。

シェリーは樽を何段か積み上げて、熟成に応じてワインを次の樽に移しながら造られます。
ボデガ(蔵)を訪れた際、「ずいぶん上の方まで樽を積んでいるなぁ~」と思ったら、シェリーとして販売するのではなく、「売るための樽」を仕込んでいる最中でした。

『シェリー樽』とは

世界で人気のシェリー樽は、シェリーを「熟成」させるために使われたものです。
シェリー熟成に使用した樽なら何でもよいというわけではなく、シェリー原産地呼称統制員会の規定を満たすことで「シェリー樽」に認められます。

『シェリー樽』の条件

シェリー・カクス(樽)の認定に必要な条件にはこのようなものが挙げられます。

  • 容量1,000L未満の新樽がベース
  • シェリー生産地域内の登録されたボデガ(蔵)で、シェリー生産地域内の登録された畑のブドウから造られたワインを酒精強化し、樽容量の85%以上を満たしていたこと
  • 酒精強化されたワインは、度数が15%以上
  • ワイン(シェリー)は最低でも1年以上熟成させる
  • ワイン(シェリー)を樽で発酵した場合はその期間を最長で3ヶ月、熟成期間に加えることができる
  • 樽の中のワインの総量が、その期間を終了するまでの間、樽の容量の2/3以上を維持している
  • 工程の開始前や終了時に樽を水で満たしていない
  • 「DOシェリーおよびDOマンサニージャ※で認定されるワインの生産に最低2年使用された樽」は、そのタイプ名を名乗ることができる

条件を満たしたシェリー・カスクにはQR付きの認定シールが貼られ、樽の由来や熟成されたワインなどのデータを管理・追跡することが可能になります。

※DO:スペインの原産地呼称のこと。

人気の秘密・歴史

シェリー・カスクが使われるお酒として代表的なのがウイスキーです。とくにスコットランド産ウイスキーの熟成過程で使われることが多く、ワイン用ブドウの搾り粕を蒸留して造る「グラッパ(イタリア)」「マール(フランス)」のような蒸留酒にもシェリー樽を使った銘柄があります。

19世紀前半、シェリーの大消費国といえばイギリスでした。
当時イギリス国内にオフィス、倉庫、瓶詰工場を持っていたシェリー会社は、シェリーの入った樽をイギリス国内で保管していました。瓶詰めを待つ間、樽にはシェリーの風味と香りが浸み込んでいました。ウイスキー商人がシェリーの空樽でウイスキーを熟成させると驚くほどの深みのある特徴がでると気づいたのですが、実際にシェリーの故郷ヘレスでは既に熟成樽がブランデー(ワインの蒸留酒)の熟成に使用され、高い品質の酒を生み出していました。

19世紀半ばになると、シェリーが瓶詰めされていたイングランド南部とスコットランドのウイスキー蒸留所の間で空樽が売買されるようになりました。今日もそうであるように最高級のウイスキーに用いられるようになっていきました。

近年シェリー樽の需要はますます高まっていて、2015年にシェリー樽の規定が定められました。これによってシェリー樽の供給とブランドが保たれるようになっています。

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参考
シェリー資格称号認定試験実行委員会/『2024年版 シェリー&マンサニージャ教本』/2024年
しぇりークラブ(高橋美智子)、和泉もも子、益子勝也/『Sherry~樽の中の劇場』/株式会社スペクトラム・コミュニケーションズ/2017年

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