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ワインのキホン

『スペインワイン』まるわかり。歴史と州ごとの解説

『スペインワイン』まるわかり。歴史と州ごとの解説

スパークリングワインの『カヴァ』(カバ)や、ワイン産地の『リオハ』『プリオラート』、ブドウ品種の『テンプラニーリョ』などスペインワインには知っておきたい特徴が目白押しです。ワイン大国スペインの歴史や各州の特徴を解説します。

スペインワインの特徴

スペインはワイン用ブドウの栽培面積で世界一(2016年データ)を争うワイン大国です。イベリア半島と、地中海のバレアス諸島、カナリア諸島を含めた17の自治州すべてでブドウが栽培されており、ヴァラエティに富んだ銘柄を見つけることができます。北部にある『リオハ』『プリオラート』、そして『リベラ・デル・ドゥエロ』といったスペインを代表する赤ワイン産地や、緑豊かな『リアス・バイシャス』の白ワイン産地が有名です。スペインで最も歴史の長いワインは世界三大酒精強化ワインの『シェリー』で、南部のアンダルシア州の特産。スパークリングワインの『カヴァ』も有名です。

スペインワインの歴史

スペインワインは歴史を見ることが理解を深める近道です。

古代~

スペインにブドウ栽培が伝わったのは紀元前1100年頃です。現在のシリア、レバノン、イスラエル(Israel)北部にかかる地中海沿岸部に都市を築いていたフェニキア人によってもたらされました。フェニキア人はフランスにもブドウ栽培を伝えましたが、スペインの方が500年ほど早い時代です。この頃海上交易によって栄華を極めていたフェニキア人はスペインのカディスを拠点とし、この辺りをXeres(ヘラまたはセラ)と呼んで生産したワインを交易に使いました。現在シェリー酒の産地である「へレス」の語源はここからきています。

前200年頃になると古代ローマの勢力がイベリア半島に及び、ワイン造りは盛んになりました。その後ゲルマン系の時代が終わった711年以降、イベリア半島は南部から北上したアラブの勢力下となり、大部分が500年以上支配されました。「コーラン」で飲酒が禁止されているため、この時代のスペイン(とくに南部)はワイン不毛の地になります。「へレス」は栄養食、干しブドウ、香水や医療用などを口実に約2/3の畑を守り切り、歴史的なシェリー酒の生産が続いています。

アラブ勢力からイベリア半島を回復する運動は「レコンキスタ」と呼ばれ、主力となったのは「カスティーリャ王国」「アラゴン王国」の連合軍でした。約8世紀に及ぶ戦いの後に勝利を収めて王国としてスペインが誕生します。この戦いの間、回復した土地にブドウを植えることが領地の証とされたためスペイン全土でブドウが栽培されるようになりました。

北スペインの一部はイスラムと戦い続け、城塞の多い「カスティーリャ」と呼ばれる王国になりました。カスティーリャはもともとレオン王国の一部でしたが、逆にレオン王国を吸収。首都をバリャドリッドにおいて文化が栄えました。今日優れたワインを輩出している『リベラ・デル・ドゥエロ』やトロ地区はこの文化圏にあります。

もう一つ重要なのはスペイン最北西部のサンティアゴ・デ・コンポステーラ(ガリシアで9世紀にサンティアゴ(聖ヤコブ)の遺骸が発見されたことです。寺院が建てられエルサレム、バチカンと並ぶ巡礼地になりました。国内はもちろん、フランスやポルトガルからの巡礼路を人々が行き交うにつれワインが必要とされ、とくに北スペインのワイン産地(バスク、ナバーラ、リオハなど)や12世紀頃にはフランスの西南地方(シュッド・ウェスト)までをワイン産地として発展させました。

大航海時代~現代

レコンキスタ後のスペインがヨーロッパ各国との政略結婚をすすめていた1492年、アメリカ大陸が発見されて大航海時代が幕を開けました。新大陸を領土に拡大したスペインの船にはシェリーなどのワインが大量に積まれ、へレス近郊の都市セビーリャから旅立ちました。1516年にハプスブルク朝となったスペインはメキシコとペルーの銀山の発見などで世界一の強国となり無敵艦隊を擁する海洋国家になります。しかし一方では閉鎖的な性格で、民衆に富が回らない保守的な構造であったことから徐々に国力が衰退。フランス革命や産業革命を起こしたフランス、イギリスに遅れをとるようになりました。

19世紀後半にフランスで後にヨーロッパ各国のブドウ畑を壊滅に陥れたフィロキセラ(ブドウ害虫)渦が発生しました。被害の大きかったフランスからスペインにワイン生産者が流れ込み、先進的な醸造技術や醸造機器がもたらされました。スパークリングワインの『カヴァ(カバ)』、2大銘醸地の『リオハ』『プリオラート』はいずれもフランスのワイン産業が大打撃を受けたことが転換期になり、その後大きく成長しました。スペインにフィロキセラが到達した頃には対抗策(接ぎ木)が解明されていたため畑の回復は早かったとされています。19~20世紀は世界大戦などの混乱によって輸出が激減。1970年代になって民主化の道を歩き始め、半鎖国経済から脱却していきました。ワインは量より質を求める現代的な方向へとようやく転換しました。

このようにスペインのワインはヨーロッパ諸外国に比べてその頭角を現すのが遅れたという背景があります。

現在の『ワイン法』

スペインではフランスより2年早い1933年にワイン法が発効しました。最初にリオハ、へレス(シェリー酒)、マラガといった伝統産地の原産地呼称が開始され、徐々に拡大していきました。2009年にEUが発効した新規則に則った形に変更されて現在に至っています。

貴重な2産地『DOCa』

(Denominacion de Origen Calificada)

「特選原産地呼称ワイン」で、DOワインの中から厳しい基準で昇格が認められたものに限ります。現在認可されているのは1991年の『リオハ』、2009年の『プリオラート』の2か所だけです。

原産地呼称ワインの中核『DO』

(Denominacion de Origen)

原産地呼称統制委員会が設置された地域で収穫、認可されたブドウ品種を使用など、厳しい基準を満たしているワイン。その地域の「DO表示」が認められます。地図のように厳正に決められており、スペインの高級ワインの中核です。「Dnominacion de Origen」のラベル表記がありますが、シェリー酒とカバ(カヴァ)だけ例外になっており、単にSherry(Jerez)、Cavaとだけ表記されます。DO認定から10年以上経つとDOCaへの昇格申請が行えるようになります。

VC

(Vino de Calidad con Indicacion Geografica)

「地域名付き高級ワイン」の意味です。特定の地域、地区、村落などで収穫したブドウで造られます。地域性を表現したワインで、5年以上の実績でDOへの昇格申請を行えるようになります。

VPCと、VP

(Vino de Pago Calificado)

単一畑のみで収穫したブドウのワインです。各地域のなかでも、とくに独自の特徴がある畑に認められます。DOCa地域の畑であれば『VPC』、そうでなければ『VP』になります。

2024年4月現在で20の畑に認められており、州別の所在はアラゴン州(1)カスティーリャ・ラ・マンチャ州(12)バレンシア州(4)ナバーラ州(3)となっています。

ビノ・デ・ラ・ティエラ

(Vino de la Tierra)

EUの地理的表示保護IGTにあたります。特定の地方や地域名を付記したワインで、その地域で収穫したブドウで産地の特性があるものです。
「ビノ・デ・ラ・ティエラ・XXXX」とラベル表記されます。XXXXには町、県、地方名が入ります。

ビノ

(Vino)

原産地呼称、地理的表示のできないワインです。

 

『樽熟成』に関する規定

スペインには樽を使った熟成期間に規定があります。フランスやイタリアなどでも樽熟成期間による規定がありますが、各地方や銘柄ごとに定められるのが普通です。スペインは国単位で定めているところが特徴的です。

クリアンサ(Crianza)

合計熟成期間樽熟成期間樽サイズ
赤ワイン
24か月以上
6か月以上
330L以下
白・ロゼワイン
18か月以上
6か月以上
330L以下
※リオハのみ合計熟成期間樽熟成期間樽サイズ
赤ワイン
2年以上
1年
225L
白・ロゼワイン
18か月以上
6か月
225L

レセルバ(Reserva)

合計熟成期間樽熟成期間樽サイズ
赤ワイン
36か月以上
12か月以上
330L以下
白・ロゼワイン
24か月以上
6か月以上
330L以下
リオハのみ合計熟成期間樽熟成期間樽サイズ瓶熟成
赤ワイン
36か月以上
12か月以上
225L
6か月以上
白・ロゼワイン
24か月以上
6か月以上

グラン・レセルバ(Grand Reserva)

合計熟成期間樽熟成期間樽サイズ
赤ワイン
60か月以上
18か月以上
330L以下
白・ロゼワイン
48か月以上
6か月以上
330L以下
リオハのみ合計熟成期間樽熟成期間樽サイズ瓶熟成
赤ワイン
60か月以上
24か月以上
24か月以上
白・ロゼワイン
48か月以上
6か月以上

赤ワインは 合計60か月、最低24か月小樽熟成、36か月の瓶熟成 から変更になりました。

その他

合計熟成期間樽サイズその他
ノーブレ(Noble)
18か月以上
600Lオーク樽または瓶
アネホ(Anejo)
24か月以上
600Lオーク樽または瓶
ビエホ(Viejo)
36か月以上
指定なし
太陽光、酸素、外気の高温など自然の作用で酸化熟成が顕著

以前は熟成をほとんど行わないホーベン(Joven)と呼ばれるカテゴリーがありました。

代表的なブドウ品種(黒ブドウ)

スペインでは主にブランデーの原料になる白ブドウの『アイレン』と、スペインワインの代名詞ともいえる黒ブドウの『テンプラニーリョ』でブドウ畑の40%を占めています。近年では伝統品種にフランス原産の『国際品種』をブレンドするスタイルが増えました。品質を上げたと評価する場合もあれば、伝統的ではなくなったと指摘される場合もあります。産地によっては伝統品種に原点回帰する動きもみられるようになっています。

代表的な伝統品種をご紹介します。

テンプラニーリョ

Tempranillo

リオハ全体の約80%を占める最も重要な品種です。スペインを代表する黒ブドウでもあります。

ガルナッチャ・ティンタ(=グルナッシュ・ノワール)

Garnacha Tinta

アラゴン地方の原産種で、フランスやオーストラリアなどで広く栽培されています。干ばつや強い日射と強風に耐えられ、土壌を選ばず病気に強いのが特徴です。甘みのある房を大量につけるなど栽培に様々な利点があります、フィロキセラ禍以降スペイン全土に広がりました。スペインの影響を色濃く受けたイタリアのサルデーニャ島では『カンノナウ』で知られています。

カリニェナ(=カリニャン)

Carinena

こちらもアラゴン州の原産で、別名は『マスエロ』です。フランスでの栽培が盛んで『カリニャン』の名前で通っています。色調は濃く、酸とタンニンが豊かです。1980年代以降に再注目されて凝縮感があり複雑でスパイシーなワインが造られるようになりました。その代表がブドウ栽培が過酷なプリオラート、モンサンといった産地で、ガルナッチャとの巧みなブレンドと熟成によって高級ワインのニューフェイスを生みました。

メンシア

Mencia

スペイン北西部で広く造られている黒ブドウです。カスティーリャ・イ・レオン州のビエルソが起源と考えられていますが、ポルトガルのダンでも古くから記録が残っており、一説にはサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼者が帰り道にダンに持ち込んだといわれています。香り高くフルーティなワインができますが、栽培地によっては濃厚で凝縮されたスタイルになります。

モナストレル

Monastrell

バレンシア州が原産。南フランスでは『ムールヴェードル』の名前で知られます。スペインでは主に地中海沿岸の地域で広く栽培されています。土壌を選ばず干ばつに強く、豊富な日照を必要とする特徴があります。ワインは深いルビー色で果実味にあふれ、軽やかなものから良質な熟成タイプのものまで造られています。

オンダラビ・ベルツァ

Hondarribi Beltza

『ベルツァ』はバスク語の「黒」を意味する言葉です。酸味が強くアルコールが高めの黒ブドウ。バスク固有のワイン『チャコリ』の原料になります。

ガルナッチャ・ティントレラ

Garnacha Tintorera

南フランスで交配によって生まれた品種で、赤い果肉をもつ黒ブドウです。正式名は『アリカンテ・ブーシェ』で、スペインではフランスよりも広く栽培されています。カスティーリャ・ラ・マンチャ州、ガリシア州、バレンシア州などで栽培されています。ワインは色深く、ソフトでフルーティに仕上がります。

ボバル

Bobal

スペイン中東部のウティエル・レケーナを起源とする品種です。樹勢が強く結実能力が高いため収量が得られます。短く剪定することが推奨されます。乾燥に非常に耐性があり、バレンシア州のウティエル・レケーナと、州境の向こう側マンチュエラ(カスティーリャ・ラ・マンチャ)では重要品種です。以前は量産ワインの品種でしたが、真摯に取り組んだ深い色合いの滑らかなワインの出現によって見直されています。

代表的なブドウ品種(白ブドウ)

アルバリーニョ

Albarino

北スペインのガリシア州原産。スペインで最高の白ブドウ品種されています。フルーティさとフローラルさを併せもちボディと酸味があります。海の香りを漂わせるためシーフードとの相性は特筆もの。スペイン北西部で最も古いブドウ品種の一つとされていて、脈々と栽培が行われてきました。

ベルデホ

Verdejo

スペイン中央部のメセタ北西部が原産です。「アルバリーニョ」とならんでスペインの高級品種とされ、カスティーリャ・イ・レオン州のルエダで最上のワインが見られます。新鮮な芳香に富み、爽やかでありながら芳醇。深いコクと適度な酸味をもつ繊細なワインとしてルエダの名声を高めました。

シャレロ

Xarello

カタルーニャ原産の品種です。糖度が高くボディがあり酸味も強め。風味が豊かなためフレーバーのあるワインになります。標高の低いところが栽培適地で灰色カビ病に耐性があり豊産です。「カヴァ」の主要品種になっていて栽培面積は2番目。カヴァ以外の白ワインでも再注目を浴びています。

マカベオ

Macabeo

リオハでは『ビウラ』と呼ばれています。スパークリングワインの「カヴァ」ではブレンドの中心となる品種で、カヴァ産地で最大の栽培面積があります。バランスのとれた酸のフレッシュでフルーティさが特徴。発芽が遅いため春の霜害をあまり受けません。べと病に比較的かかりにくく豊産です。

パレリャダ

Parellada

「カヴァ」の主要品種のひとつです。栽培面積はDOカヴァで3番目の大きさ。比較的ニュートラルでフレッシュ、フルーティで上質なワインになります。カヴァにはつらつとした個性を与えます。非常に豊産性ですが、収量を抑えることで花やリンゴのようなアロマが表れます。

パロミノ

Palomino

スペイン全土で栽培されていますが、アンダルシア州の「シェリー」に不可欠な品種として重要とされています。アルバリサという石灰を豊富に含んだ土壌で育つとシェリーに特有の風味がうまれます。

ペドロ・ヒメネス

Pedro Ximenez

アンダルシア州でデザートワインを生むブドウ品種です。シェリーのフィノ、アモンティリャードとヴィンテージワインの原料にもなります。もともと多くの糖分を含むのが特徴で、それをさらに収穫後に天日干することによって凝縮させたシェリーのペドロ・ヒメネスは極甘口になります。

各州の特徴

地図のように、北イタリアの沿岸部に緑の多い地帯があり爽やかな白ワインの有名産地があります。
内陸は「メセタ」と呼ばれる台地が広がり寒い冬と暑く乾燥する内陸性の気候です。
カスティーリャとアラゴンの連合軍が「レコンキスタ」の中心でしたから、北部は早くからキリスト教の文化になり、南部にいくほどイスラムの影響を色濃く受けています。最も歴史あるシェリー酒の産地「へレス」はその中で畑を守りました。

ガリシア州

キリスト教の3大巡礼地『サンティアゴ・デ・コンポステーラ』が北スペイン全体の文化に影響与える州です。スペインを代表する白ワインの産地としても覚えておきたい場所で、『リアス・バイシャス』アルバリーニョ種から造られる、溌剌とした酸味と清々しい風味の白ワインは一度飲んだら記憶から離れることはないでしょう。

ラ・リオハ州

スペインで最も有名な赤ワイン産地『リオハ』を擁するのがこの州です。フィロキセラ禍によってボルドーからワイン生産者たちが最新の技術を持ち込んだため赤ワイン産地として早から名を馳せました。テンプラニーリョの果実味が活きた赤ワインがリオハの代名詞。オーク樽でじっくりと熟成された口当たりの良さ、果実味、バランス、熟成感などから世界屈指の赤ワインとして賞賛されています。リオハ県のみで構成され、県都はログローニョです。

バスク州

美食で有名な町『サン・セバスチャン』を擁する州です。州都はビルバオ。バスク人の起源はいまだ解明されておらず、インド・ヨーロッパ語よりも古いバスク語をもっているなど独自の文化をもっています。ワインは高いところからグラスに注ぐ『チャコリ』と呼ばれる白ワインが知られており、北スペインの海沿いらしい、爽やかな風味が人気を博しています。

ナバーラ州

州都は牛追い祭りで有名なパンプローナ。隣にある偉大な赤ワイン産地リオハの陰に隠れしまいクローズアップされることは少ないですが、ピレネー山脈を越えて国境の向こう側がフランスであることから、スペインワインのなかでは古くからフランスの品種が導入されて良質なワインを造っていました。南部は砂漠地帯、北部は山がちであるため気候も土壌もさまざま。バラエティに富んだ個性豊かなワインが魅力の州です。

アラゴン州

レコンキスタの中心となったのは、カスティーリャ王国と、ここ「アラゴン王国」の連合軍でした。アラゴンは一時期アラブに支配されましたが間もなく奪回、首都を現在の州都であるサラゴサに置きました。ブドウ栽培の歴史は古いのですが、有名産地がなくブドウ品種の「カリニャン(カリニェナ)」の故郷である『カリニェナ』が少し知られていたくらいでした。改革の先駆けになった『ソモンターノ』には、近代的な醸造技術が導入されて品質が高まりました。

カスティーリャ・イ・レオン州

スペインワインのスター銘柄『ベガ・シシリア』を生んだ銘醸地『リベラ・デル・ドゥエロ』は別格のワイン産地です。テンプラニーリョを主体にした生き生きとした酸味と、色・果実味・風味が濃厚な凝縮感のある赤ワインが生産されます。100kmしか離れていないリオハの赤ワインとはまた違ったスタイルになるのが興味深いところです。州の主要都市はバリャドリッド。

カスティーリャ・ラ・マンチャ州

内陸地であるためフィロキセラによる被害が小さく、世界大戦の戦地にならなかったことからワインの増産が重ねられました。その結果「マンチャ」はアラビア語で「水のない土地」の意味ですが、「ワインの湖」と称されるほどになっています。『ラ・マンチャ』は単一の原産地呼称ではブドウ栽培面積で世界最大です。量より質を求められる時代に入って対応に遅れがありましたが、近年は投資によって品質が向上。コストパフォーマンスのあるワインが造られるようになっています。州都はトレド。

マドリード州

スペイン王国誕生後に宮殿が置かれた首都のマドリードのある、マドリード県のみが一つの州になっています。DOワインは『ビノス・デ・マドリード』1つだけ。首都圏の拡大に伴ってブドウ畑は激減しました。

カタルーニャ州

バルセロナを州都とする経済的に豊かな州です。スペインを代表する『プリオラート』の赤ワインはガルナッチャ、カリエニャ(カリニャン)を主体にフランス品種をブレンドして濃厚かつ洗練されたスタイル。リオハとならんでスペインに2つしかないDOCaワインに認定されています。また、スパークリングワインのカヴァ(カバ)の大部分をカタルーニャ州が産出しており、世界中のテーブルで乾杯に使われています。

バレンシア州

カタルーニャ州と地続きの南隣ですが別世界。ワインの特徴も異なります。イスラム支配化にあった時代、肥沃な大地に灌漑技術がもたらされてバレンシア・オレンジに代表される果物産地として名高くなりました。また、スペインきっての米どころでパエリア発祥の地でもあります。かつてはバルクワイン(桶売り)の産地でしたが、近年になり畑や醸造施設に大規模な投資が行われています。

主要なブドウ品種は黒ブドウが『ボバル』『モナストレル』『テンプラニーリョ』
白ブドウは『モスカテル』『アイレン』など

ムルシア州

州都はムルシア。レコンキスタの後に残留したイスラム教徒とキリスト教徒の文化が融合して独特な雰囲気の漂う州です。かつてはバルクワイン(桶売り)の産地でしたが、投資や新しいヒントから洗練された赤ワインが生まれるようになりました。『イェクラ』『フミーリャ』『ブーリャス』三つのワイン産地は内陸部にあり、暑く乾燥する夏と厳しい寒さの冬。フランスで『ムールヴェードル』として知られる『モナストレル』から造られる芳醇な赤ワインで知られます。

エストゥレマドゥーラ州

イベリコ豚の産地と聞けば興味を持たれるかもしれません。主たる産業がないないため手つかずの自然があり、サクランボやオリーブの緑豊かな谷と風になびく小麦畑や牧草地が広がる肥沃な土地です。地酒として愛される「ビノ・デ・ラ・ティエラ」クラスの大産地で、その一部が唯一のDO『リベラ・デリ・グアディアーナ』に認められています。

アンダルシア州

多くの日本人がもつスペインのイメージはおそらくここ、スペインの縮図といえる州です。燦燦と降りそぐ陽光、乾いた大地。闘牛場やアルハンブラ宮殿といった名所があり、町には小さなバーが立ち並びます。タパスやワインを楽しみながらフラメンコが演じられ、眠らない夜がここにあります。スペインの南端にあるアンダルシアは紀元前にどこよりも早くワイン造りがはじまり、イスラム統治時代の影響を最も色濃く残します。飲酒が禁じられたため多くのブドウはその姿を消しましたが、海沿いのいくつかの地域は畑を守りました。『へレス(シェリー酒)』とマラガがその代表です。州都はセビーリャで大航海時代旅の拠点として活躍しました。

スペインには昔から小規模ながら無視することのできないワインを輩出する2つの『諸島』があります。

バレアレス諸島

バルセロナとコルシカ(コルス)島の中間あたりに位置します。5つの島から成り、その中央がマヨルカ(マジョルカ)島で沖縄本島の面積の3倍ほど。バルセロナから船で手軽にアクセスできるため、陽光とビーチを求める人々を引き寄せるヨーロッパ屈指のリゾート地です。年間300日が晴天でマント・ネグロ種を使った赤ワイン、モル種(プレンサル・ブラン)を使った白ワインが主流ですが、ほとんどは観光客に消費されます。

カナリア諸島

鳥の「カナリア」の原生地でスペイン本土から約1,000キロ、モロッコ沖の約100キロ地点にあります。7つの島から成り、新大陸とスペイン本土の中継地であったためアフリカ、ヨーロッパ、アメリカ三大陸の文化の影響がまじります。船の補給のためワインの生産が行われてきた歴史をもちます。フィロキセラが上陸することはなく、現在でも自根のブドウが栽培されています。

関連コンテンツ

参考
大滝恭子、長峰好美、山本博/『スペイン・ワイン』/2015年
スペイン大使館経済商務部 発行冊子/『スペインのワイン』/2006年
ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン/『世界のワイン図鑑 第8版』/ガイアブックス/2021年
一般社団法人日本ソムリエ協会/『日本ソムリエ協会 教本2023』/一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)/2023年

DO and IGP Maps/Foods and Wines from Spain/2024.4.2閲覧
https://www.foodswinesfromspain.com/en/wine/do-and-igp-maps#book5/

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