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ワインのキホン

ワイン用ブドウ栽培~ブドウ畑の一年間~

ワイン用ブドウ栽培~ブドウ畑の一年間~

ワインになるブドウはどんな条件のもと、育っているのでしょうか?ブドウ栽培における条件と、季節のサイクルについてお伝えします。

ワインのブドウ栽培に必要な条件とは

ワインを造るブドウを栽培するには、気温・日照・水分・土壌の4つの条件が必要となります。それぞれ説明していきましょう。

① 気温


ブドウの栽培には特定の気温条件が必要で、一般的なブドウ栽培において、平均気温が10℃〜20℃が求められるのに対し、ワイン用のブドウ栽培では最適な気温は10℃〜16℃とされています。

また、年間を通して見ると、ブドウの開花時は15℃〜25℃が理想的であり、枝が成長する生育期や実が熟す成熟期には20℃〜25℃が望ましいとされています。

さらに、日々の気温の変化も重要で、一日の中で寒暖差がある方がブドウの品質向上に寄与します。
四季のような気温の変化があることで、ブドウの成長に良い影響を与えます。

② 日照


ブドウは日光を好む植物で、光合成によって糖分を作ります。そのため、日当たり良好な場所を選ぶことが大切です。
ブドウの成熟に必要となる日照時間は1,000時間~1,500時間と言われており、日照の強さでは南向きの斜面位置するブドウ畑の方が、北向きよりも有利です。

③ 水分

ブドウは水分をたっぷり吸う植物で、発芽期から果粒軟化期までには十分な水分が必要になります。
開花後・結実後や収穫時期には過度な雨量がブドウの成熟に悪影響となるため、年間降水量は500mm~900mmが適しています。
この生育期と、果実を実らせて種子をつくる時期を分けるのが「ヴェレゾン期」です。
ブドウの成長には水は必要ですが、ヴェレゾン期を過ぎても根が多くの水分を吸ってしまうと枝や樹の成長が止まらず、果実を熟させる代謝の移行がうまく働かなくなってしまいます。その結果、枝や樹の成長に養分を取られ、果実に必要な養分が行きわたりません。
また、過度な湿気は病気などの侵攻を早めることにも繋がります。熟した果実を得るために雨量は少ない方が好ましいです。

④ 土壌


土壌はブドウに窒素分やミネラル、水分などの栄養分を与えます。
生育期のブドウに十分な水分を供給し、ヴェレゾン期には地下水位が下がるなどで過度な水分供給を止めるような土壌が理想的です。「保水性がありながら排水性もよい」土壌がブドウ栽培に適しているといえます。

ブドウができるまでのサイクル

ブドウはブドウ科に属する冬季落葉性のつる性植物です。春に芽吹き、秋の収穫後に落葉して冬を迎えます。ブドウを収穫するまでの畑の様子を季節ごとに見ていきましょう。

① 冬:休眠期


冬が近づき落葉すると、ブドウは休眠期に入ります。休眠期は下がった気温が再び10℃程度に上がるまで続きます。

11月や12月には土寄せ(ビュタージュButtage)を行います。これは栽培に欠かせない管理の一つで、ブドウの根元に土をかぶせて幹を霜から守ります。

1月~3月にかけて行われるのが剪定(タイユ Taille)です。
ブドウは枝葉を伸ばし、多くの果実を実らせようとします。しかし多くの実をつけすぎるとすべてのブドウに栄養が行きわたらなくなってしまうので、管理する必要が出てきます。より良い果実をつくるためには剪定が大切です。
この時期に行われる剪定では不要な枝を切り落として樹を目的の形状に仕立てます。ブドウの樹は樹液をめぐらせて葉や枝に栄養を届けていますが、休眠期には樹液の循環が止まります。休眠期前に枝を剪定してしまうと、切り落とした部分の修復をしようと限りある樹液が使われてしまい、樹そのものが衰える原因になります。
暖かくなり樹が活動を始めると休眠期に剪定された枝の先から樹液が涙のようにしたたることがあります。この現象をプルール(Pleurs)と呼びます。

② 春:芽吹きの季節


3月になり気温が10℃を超えると芽が出てきます。
寒冷地では霜がおりることがあるため、ブドウの樹に水をまいて凍らせて、氷の膜によって芽を霜被害から守る方法があります。
この時期には畝くずし(デビュタージュ Debuttage)を行い、11月12月に行った土寄せを崩して元に戻します。
4月を迎えると展葉(フイエゾン Feuillaison)が始まります。これはブドウの樹が葉をつけること。発芽した芽が広がり葉となり、ここから葉がどんどん増えていきます。
5月には花の蕾が膨らみ始めます。

③ 夏:開花から結実へ


6月に入ると開花(フロレゾン Floraison)が始まります。白くて小さい花が咲き、良い香りが畑に広がります。ブドウの花が咲いている期間は一週間程度です。
花が散った後、ブドウの実がつき始めます。このことを結実(ヌエゾン Nouaison)といいます。
畑で行うのは夏季剪定(ロニャージュ Rognage)です。果実により多くの栄養を届けるために、伸びすぎた枝や葉を切り落とします。日当たりや風通しを良くするための摘葉や、ひと房の凝縮度を上げるために実りすぎた果実をある程度まで減らす摘房もこの時期の作業です。果実が青いうちに摘み取るので「グリーンハーヴェスト」と呼ばれています。

④ 秋:色づきが進んだら…


7~8月は着色期(ヴェレゾン Veraison)、ブドウの実が色づいてきます。ブドウが成熟を迎えるのが8月~9月です。色づき始めてから成熟まで40日程度かかります。
9月~10月はいよいよ収穫(ヴァンダンジュ Vendange)です。開花から約100日で収穫できるといわれています。
生産者は果汁の糖度や酸度の確認によって収穫時期を決めます。収穫は手摘み、または機械で行います。

環境によって異なるブドウ樹の仕立て方法

樹の仕立て方は土地や気候、品種によって異なります。代表的な例を見ていきましょう。

① 垣根仕立て


地域:ボルドー、ブルゴーニュ、ドイツ、イタリアなどヨーロッパを中心に世界的に広く実施。なだらかな傾斜地や平地向き。
針金と柱を使用して、枝を地面と垂直方向に伸ばす仕立て方です。

1)ギヨ
長梢剪定法で主幹から母枝を広げて水平に誘引します。主幹から母枝を1本誘引する形を「ギヨ・サンプル」、2本双方に誘引する形を「ギヨ・ドゥブル」といいます。

2) コルドン・ロワイヤ
主幹から左右に枝を分け、それに2芽の短梢を等間隔にとっていく方法です。左右に枝を伸ばすのではなく、片側だけの場合もあります。

② 棒仕立て


地域:モーゼル、北部ローヌなどで実施。
針金で垣根をつくれないような急斜面で行う剪定法です。左右に伸びた2本の長梢を主幹に添えた棒を中心としてハート型になるよう縛り付けます。

③ 株仕立て(ゴブレ)


地域:南フランス、スペイン、ポルトガルなど、主に乾燥地で多く使用。
主となる幹を太く低く育てて、上部に短梢を数本残します。針金や棒に固定しないシンプルな仕立てです。ブドウが成長すると上部の葉が生い茂り、ブドウを強い日差しから守ってくれるため、温暖な地域で古くから続く剪定方法です。

④ 棚仕立て


地域:日本、イタリア、ポルトガルの一部、エジプトなど。多湿もしくは日射量の多い地域。
棚を作ることでブドウの葉を地面に対して水平に天面に広げる剪定方法です。ブドウの植栽密度が低く、樹体は大きくなる傾向にあります。果実が人の目の高さになるため、細かい手入れが行いやすく、生食用ブドウの栽培にも適用されています。

有機農法について

日本における有機農法とは以下の条件に定義されています。
・化学的に合成された肥料や農薬を使用しないこと
・遺伝子組み換え技術を利用しないこと
・農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減すること
世界的に採用されている国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が定めたガイドラインに基づいてJAS規格が規定されています。

近年人気が高まっている「ナチュラルワイン」にもこの有機農法が用いられます。ナチュラルワインについて詳しく書いたページがあるので、ぜひご覧ください。

あわせて読みたい: 『ナチュラルワイン』の正しい解説。

最後に

ワインの味わいはブドウの出来が左右します。
そのため生産者たちは1年を通して丹精こめてブドウを栽培しています。
ワインを飲みながら、その季節の畑に想いを馳せるもの楽しいですよ。ぜひお試しください。

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